著作権が“非親告罪”に?スマホユーザーの注意点

第30回 インターネットメディア「STANDBY」
ネット上の画像をSNSなどにアップ…これだけで訴えられる可能性も  写真提供:xiangtao / PIXTA(ピクスタ)
ネット上の画像をSNSなどにアップ…これだけで訴えられる可能性も 写真提供:xiangtao / PIXTA(ピクスタ)

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の、参加国間による交渉が最終局面を迎えている。交渉がまとまれば我々の生活に関わる様々な分野に影響を及ぼすことになるが、スマホユーザーにとって無視できないのが、TPPによって新たに適用されるとみられる「著作権の非親告罪化」。やや聞きなれない言葉だが、この変更により今まで何気なくやっていたネット上での行為が「著作権侵害」として摘発されてしまう可能性があるという。

そのポイントについて、アディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士にうかがった。まず、そもそも「著作権の非親告罪化」とはどのようなものなのか?

「著作権は美術やアート、デザイン、音楽といった創作物だけでなく、個人が撮影した写真、ブログの文章など、あらゆるものに存在します。それらを著作者の許可なく無断で利用した場合、たとえばネット上で拾った画像をSNSなどにアップしただけでも、厳密にいえば著作権侵害にあたります。ただ、日本において著作権侵害は『親告罪』にあたり、著作者による親告、つまり告訴がなければ刑事罰に問われることはありませんでした。それが、『非親告罪化』されることで著作者の告訴がなくても刑事責任を問うことができるようになります」(篠田弁護士、以下同)

篠田弁護士によれば、SNSをはじめネット上は「著作権侵害の宝庫」。誰もが無意識に罪を犯してしまっている無法地帯であるという。たとえば、第三者が創作したイラストやマンガのひとコマを拾ってツイートしている事例などは、たびたび見受けられる。非親告罪になることで、極端にいえばそれら全てが取り締まりの対象となるわけだ。

「ただ、警察もその全てを取り締まることは事実上不可能でしょう。現実的には、ある程度のガイドラインを設けて対応することになると思われます。捜査の手が及ぶポイントとしては、『商用利用であるか否か』『悪質性、つまり著作権侵害を認識した上で悪意を持って利用したか否か』、その他、発信者の影響力の大きさなどを含めた総合的な判断になると思います」

とはいえ、用心するに越したことはない。特に変更直後は「見せしめ的に取り締まりが強化される可能性もある」(篠田弁護士)という。誰かの著作物を利用する場合は必ず許諾をとるか、引用の要件の範囲内で行うことが改めて重要になってくるだろう。

なお、著作権侵害で起訴された場合、最大で10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(法人等の場合は3億円以下の罰金)という重い有罪判決を受ける可能性がある。軽い気持ちで行ったコピペが大事に発展しないよう、十分に注意したいところだ。

(榎並紀行/やじろべえ)

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弁護士法人アディーレ法律事務所

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世の中を切り取るインターネットメディア「STANDBY」が配信する記事です。
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