●年金だけでは到底足りない! 長生きすることはリスク!?
「日本人は心配性で貯蓄が好きな国民と言われています。ただ、その理由は、漠然とした『不安』を持っているから。しかし、会社員であれば厚生年金、自営業やフリーであれば国民年金に加入し、老後になると年金をもらえるようになります。ただ、年金制度というものは生活保護などの制度と違って、最低限の生活が保障されているわけではありません。年金はこれまで自分が払ってきた分でさえも、もらえない時代が来るかも知れません。実際の生活に十分とされる金額から考えても、とても足りません」(以下、丸山さん)
丸山さんは、「現在の年金制度も盤石ではない」と警鐘を鳴らします。
「最近、年金制度の内容がコロコロと変わっていることも心配です。ママ世代の老後は、年金を受け取る時期が70歳まで引き上げられる可能性もあります。いまは元気な高齢者が多いので、働ける年齢が上がっていくかもしれませんが、ゆとりのある生活は厳しいと思います。これからの時代、長生きすればするだけリスクだといえるでしょう」
●老後貧乏にならないために必要な生活費はどれくらい?
とはいえ、健康でゆとりある老後を過ごしたい、というのは多くの人に共通する願い。そこで、知っておきたい「老後の生活費」について、丸山さんに教えてもらいました。
<60歳以上の夫婦がひと月に必要な生活費>
合計 28万1,365円
<内訳>
・食費 … 6万8,405円
・住居費 … 1万6,613円
・水道光熱費 … 2万2,957円
・家具、日用品 … 9,953円
・被服費 … 8,058円
・保健医療費 … 1万5,057円
・交通、通信費 … 2万8,839円
・教養、娯楽費 … 2万6,152円
・交際費 … 2万7,579円
・その他支出 … 5万7,752円
※総務省家計調査(平成27年)より作成
この生活費をもとに、老後の生活に困らない、貯めるべき金額について丸山さんは次のようにアドバイスします。
「20歳から60歳まで国民年金を支払った場合、一人当たりの年金支給額は月に6万5,000円ほど。必要な生活費とは大きくかけ離れていることがわかります。また、年金の支給開始年齢が70歳までに引き上げられるとも言われていますので、会社員で定年退職を60歳で迎えるとすると、そこからの10年間で、不足する金額は約2,600万円にものぼります。
つまり、60歳までに3,000万円程度の貯蓄を作っておくことが、老後貧乏を回避するためにも必要だと考えています」
もちろん、60歳を超えても働いている高齢者も多いもの。しかし、その一方で、夫や自分自身が年を重ねても、同じように元気に働けるという保障はありません。3,000万円という大金は、あくまで年金受給までの不足分を補う『つなぎ』の役割に過ぎないようです。
●他にもいろいろ心配が…老後資金の「現実」
「生活費の他にも、たとえば住宅ローンがあります。ただ、住宅ローンは退職するまでに繰り上げ返済するなどの対策をして、老後に突入するまでに払い終えることが大事です。退職してしまうと収入が大幅に減ってしまうことが多いので、老後資金にも影響が出てきます。
さらに高齢出産だった場合、子どもの教育に掛かる費用がどんどん後倒しになり、自分たちの老後の資金を貯蓄できる期間が短くなっています。高齢になるほど自分たちの体力も弱ってきて、さらに子どもの教育に出費がかさむと貯蓄がなかなか難しくなってしまいます」
さらに、70歳から先の暮らしに掛かるお金についても不安は残るものです。
「いまの時代、70歳はまだまだ体力があるとされますが、そこから先の後期高齢者ということになると、認知症や寝たきりになる可能性もゼロではありません。健康であっても、高齢者施設に入所するとなると、入所時の頭金は夫婦で3,000万円を簡単に超えることもざらです」
こうしたことを踏まえると、いますぐにでも月々いくらでやりくりをしなければいけないか、お金をどうやって使うかという計画を立てないと老後の破綻リスクはいつまでたっても減らないのかもしれません。
老後に必要な貯蓄額を漠然と考えるだけでなく、何にどれくらいお金が必要なのか、細かく考えてみることが老後資金を貯めるうえでの第一歩になるはず。いま一度、現在の生活費から貯金計画まで見直してみてはいかがでしょうか?
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)