●夫が20代の女と…
「夫は優しくてマジメな性格。女性にも奥手で、私と付き合った時も、半年も手を出さないくらいの人でした。結婚2年目で長男が、5年目で次男が誕生しましたが、そこからの私は子どもに一直線。食事や洗濯はきちんとやっていましたが、ベッドメイキングや着る物の管理などは、“自分のことは自分でやって”と夫に言うのが口癖でしたし、私は子どもの世話で精一杯なので、夫が家事を手伝うのは当たり前だと思っていました」(Aさん 以下同)
Aさんは細身で笑顔がかわいいママ。タレントの小倉優子を思わせるビジュアルで、女性としても十分魅力的だ。
「夫は中堅の広告代理店に勤めているので、帰りが遅いのは日常茶飯事でしたし、“今日は食事作らなくていいんだ! ラッキー”くらいに思っていたんです。“子どもたちとピザ取ろう~”みたいな(笑)。でも、いくらなんでも、帰宅が深夜2時、4時は遅すぎですよね。子どもたちも2人とも小学校高学年になり、ずいぶん手が離れましたが、ワーキングマザーなので、それでも日々くたくた。夜、夫に求められても応えられず、気がつけば10年近くセックスレスに陥っていました。でも私も夫が好きでしたし、休日は家族で仲良くお出かけしていたので、私自身は、今の生活に満足していたんです」
そんな平穏な生活は一瞬で崩れ去った。なんと夫が不倫相手と手をつないで歩いているところを、偶然、Aさんの友人が目撃したというのだ。
「すぐに夫に電話をして、会社を半休させました。あのシャイな夫が手を繋いで歩くなんてただごとじゃないし、深夜の帰宅もすぐ疑いに変わりました。私は一度思い立つと我慢ならない性格なので、その晩は、しっかりと尋問することにしたんです」
意外にも、夫はすぐに彼女との仲を認めたが、肉体関係は絶対にないと言い張った。
「“本当に俺が悪いけど、絶対に何もしていない。元々遊びだから気持ちはないし、ただ飲みに行ったりしていただけ”と言うんですけど、私の方はショックで食事ものどを通らなくなって、たった3日で3キロも体重が落ちました。夫も“相手とは絶対に別れる”と言うし、子どものことを考えると、私にも別れるほどの勇気はない。でも、私としては、例え体の関係がなかったとしても、それは立派な浮気。たまたま事が発覚したから未然に防げただけだと思うんです。さらに頭にきたのが、相手は20代後半だとか。こんな40代のおじさんが、まだ若い子に相手にされるんだと思ったら、1人になる度にくやしくて涙が出るし、本当にキスもしていないのか? 悪い妄想ばかり広がっていきました」
この事件を機に、徹底的に夫婦で話し合い、お互いが本音を吐き出したという。
「私も、改めて夫のことを愛している気持ちに気づいたし、今まで男として見てあげなかったことについても反省しました。でも、ここまで気持ちを整理するのに、2、3週間はかかりましたね。ママ友にもたくさん聞いてもらって、次第に心の整理ができたように思います。夫は心から謝ってくれたし、“寂しかった”と本音も話してくれて、あれからさらに優しくしてくれるように…。セックスレスになってしまったのも、元々は私の方に大きな原因があったので、これからは2人で話し合って、徐々にリハビリしていけるように頑張りたいと思っています」
●夫は寂しい気持ちを抱えている
Aさんの件について、夫婦修復カウンセラーとして人気を得ている水野薫氏にアドバイスをしてもらった。
「妻は子どもが生まれると毎日育児に追われ、夫に気を配る余裕がなくなってしまいます。夫も子どもがかわいいし、大切な存在であることは間違いない。妻が子どもを最優先することは理解できるけれど、自分は家族のために一生懸命働いても、大事にされていないという寂しさを抱えてしまったり、ないがしろにされているように感じ始めます。それでも夫婦生活があり、満たされていればいいのですが、長年のセックスレスで心が渇いてしまっているのなら、浮気や妻以外の女性とセックスするチャンスがくれば乗ってしまうのは当然のこと。Aさんの場合もそのパターンで、これはよくある事例です。Aさんのご主人の浮気が本気でなかったこと、Aさんも傷つき苦しかったけれど、離婚はできないと冷静な判断ができ、さらに夫を責めるばかりではなく自分自身も振り返って反省できたことが修復できた大きな要因です。徹底的に話し合い、本音を吐き出したことはとても良かったことなのですが、このやり方は、Aさんのご主人のように反省している場合にのみ有効であることを認識しておきましょう」
子どもにばかり集中し、夫のことはついおろそかになりがち。夫も寂しさを抱えていること、そして妻としての至らなさに気づくことができれば、夫の浮気の後遺症は、徐々に薄れていくのかもしれない。
(取材・文/吉富慶子)