わが子が職場で“陰湿ないじめ”に遭ったら…●●するのは絶対にNG!

第3回 いじめられやすい人の特徴とは?
大学を卒業し、就活を経て、やっと独り立ちしたと思ったら、今度はわが子が職場のいじめの被害者に…。最近では、出る杭は打たれ、仕事が出来なければ打たれ、同僚同士で足の引っ張り合いなども存在するという。それでは、もしもわが子がいじめの被害者となった時、親はどう対処すればよいのだろうか? 心理カウンセラーの那賀まき氏が、“大人のいじめ”の対処法をナビゲートする。

●親としての正しい対処法は? 

1)子どもの味方として寄り添い、支える
職場で孤立している場合、いじめられている自分は親にも叱られるのではないか、見捨てられるのではないかという不安を感じてしまいます。親の意見や視点はおいておき、まずは子どもの訴えをありのまま聞き、「あなたは一人じゃない。私たちは家族として助けたいと思っている」と伝えます。うつ病などを発症し、子どもが判断能力を欠いている場合は、仕事を辞めることも視野に入れて、「子どもを守る」ための行動を考えましょう(那賀氏 以下同)。

2)子どもの置かれている状況を把握する
子どもの追い詰められ方によって、親の取るべき行動は変わります。子どもといっても立派な社会人なので、会社における立場や、今後の生き方など、本人の判断や意思を尊重することが基本です。子どもが、傷つきながらも今の状況を改善していこうとしている場合は、いじめの原因を探る手伝いをしたり、仕事に関することについては見守り、子どもが望む援助を与えるように心がけましょう。子どもがパニック状態に陥っていたり「危機的な状況」にある場合は、仕事を休ませる、辞めることを視野に入れるなど、わが子の安全を最優先で考えるようにしましょう。

3)相談機関や会社の相談窓口などの情報を集め、場合によっては相談する
必要なときに必要な情報を子どもに提供できるように情報収集したり、専門家の判断を仰いだりしておきます。子どもの話を記録に残すなど、親だからこそできるサポートがあります。

逆に、わが子のいじめを知った時、親がやってはいけないことはあるのだろうか。

職場のいじめ

●親が絶対にしてはならないこととは?

1)子どもの代わりに、解決しようとする(過干渉)
職場でのいじめは「大人同士」の関係が基本。親が子どもの代わりに会社に訴えると、職場の人に「親離れができていない未熟な人」という印象を与えてしまいます。「子どもの代わりに解決する」のではなく、あくまで子どものサポート役として支えましょう。

2)子どもを責める
いじめられた子どもの心は傷ついています。また、周りから責められたり、無視されたりした結果、「自分が悪いんじゃないか?」「自分なんていなくてもいいんじゃないか?」と疑心暗鬼に陥っていることも多いです。そんな状態で、さらに親から「努力が足りない、お前が悪い」などの言葉で責められると、子どもが安心できる場所がなくなってしまいます。

3)心配しすぎたり、パニックになったりする
親が動揺したり過剰な反応を見せてしまうと、子どもは親に心配をかけまいと、一人で問題を抱え込むようになります。

それでは、親として、傷ついた娘、息子をどう励まし、どうサポートすればよいのだろうか?

「傷ついたお子さんは、励ましの言葉や温かい言葉も拒絶するかもしれません。自分で何とかしようと焦っているかもしれなし、できることはやり尽くし、“これ以上どうしろというんだ”と頭を抱えることもあるでしょう。こういう状態の人をサポートする際、気をつけたいのは、“子どもの言動で、親自身が傷つかない”ということです。親は、“子どもが苦しんでいるのにどう助けていいかわからない、役に立てない”と感じると、その苛立ちを思わず子どもに向けてしまいます。親はいつも冷静に…。子どもが家庭でどんな様子を見せたとしても、まずは落ち着いて対応することが大切です」

「親が心理的な子離れをし、子どもの意思を冷静に聞けるよう、心の余裕を持つことが大切」と語る那賀氏。いじめが原因で子どもの視野が狭くなっている時、冷静な目で見直すことこそが親の役目であるという。人はいじめを受けている時、孤独感や疎外感、自己否定を強く感じるので、親や家庭が安心感や安らぎを与えられるように気を配れば、子どもはきっと、一人で抱えているつらい思いを、家族に伝えるはずだ。

(取材・文/吉富慶子)

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心理カウンセラー・那賀まき
那賀まき
カウンセリングサービス
大阪や徳島県を拠点にカウンセリングを行う。夫婦関係や子育て・家族の問題、職場での人間関係に関するサポートが得意。また、知的障害を持つ妹とともに育った経験を生かし、障害児のきょうだい・家族へのサポートも行っている。
大阪や徳島県を拠点にカウンセリングを行う。夫婦関係や子育て・家族の問題、職場での人間関係に関するサポートが得意。また、知的障害を持つ妹とともに育った経験を生かし、障害児のきょうだい・家族へのサポートも行っている。