子どものメンタルヘルスへの影響を軽減するためのケア
アシロ取材班
離婚を経験する子どもの年齢によって、メンタルヘルスへの影響は大きく異なるのですね。
では、子どものメンタルヘルスへの影響を軽減するためにはどのようなケアを心がけるべきなのでしょうか。
若佐様
どの年齢の子どもに対しても、親は「子どもに感情を表現させる」ことが出来ていないことが多いと感じます。
どの親にも「子どもには離婚の影響を感じてほしくなく、笑顔でいてほしい。」という気持ちや願いがあるものです。
そのため、子どもが離婚に起因するマイナスの感情表現を行うことを、忙しさや精神的余裕のなさ等の理由から拒絶したり、気づかぬふりをしたりしてしまうこともあるかと思います。
例えば、子どもがトラブルを起こした際に、その行為に至った心理的経緯を探る努力をするのではなく、物を買い与える等の一時的な処置によってその場を乗り切ろうとすることがあります。
これでは、子どもの行為の根底にある心の傷は残り続けることになります。
子どもが離婚に起因する負の感情を表現しようとした際には、それをSOSだと受け取って、よく話を聞いてあげることが大切です。どんなに忙しくても、家事や仕事の片手間ではなく、5分でも良いので、目を見て真剣に話を聴いていただけたらと思います。
実は親でも、絵本を読むことで離婚を経験した子どもの気持ちを学ぶことが出来ます。
「いまは話したくないの―親が離婚しようとするとき (心をケアする絵本)」(大槻書店)等はお勧めです。
親が子どもの心をケアする際に注意すべきポイント
アシロ取材班
他に離婚した親が子どもの心をケアする際に注意すべき点はありますでしょうか。
若佐様
子どもを”親の分身”であるとみなしている親が少なくありません。
例えば、面会交流において、同居親が、別居親に会うことによる悪影響を心配して「子どもが会いたくないと言っている。」といった内容を別居親に伝えるケース等が当てはまります。
子どもは”親の分身”ではありません。
別個の人間として、子どもの意思を尊重することが重要です。
同居親を思いやって、別居親に会いたいと積極的には言わないけれども、別居親に会うのを楽しみにしている子どもがたくさんいます。
親同士のやり取りの”道具”として子どもを利用すると、子どもは両親の間に挟まれて、強い精神的負担を強いられることになります。
あとは、親自身の精神的なケアも大切です。
精神的余裕がないと、親として子どもに愛情をかけたり、関心を持ってかかわったりすることが出来なくなる状況にも繋がります。
カウンセリング等を通じて、自分の気持ちや将来への願いを整理するのを手伝ってもらい、親は”親としての機能”を取り戻すことが出来るようになります。カウンセリングに限らず、ご自身の時間を何とか捻出して、ご自身を取り戻していただけたらと思います。
「離婚=失敗」と捉えがちではありますが、必ずしもそうではありません。
離婚を通じて、苦しい状況から回復することが出来れば、子どもは、その背中を見て、大変なことがあっても、いつか乗り越えられるんだという希望や勇気を持てるかもしれません。逆境の中でも、それをバネにして乗り越えるしなやかな強さのことを心理学の世界では「レジリエンス」と呼んでいます。
過度に「離婚を経験させてしまった自分が悪い。」という姿勢で子どもに接しすぎないことも大切なポイントですね。
配信: 離婚弁護士ナビ