省エネ住宅とは? 基準や性能、補助金や減税について解説

最近では環境問題やエコに対する関心も高まっており、マイホームを検討中の方は「省エネ住宅」という言葉を聞いたことがあるのでは。でも、実際にどのような性能や、メリットがあるのか、まだまだ知らないこともありますよね。そこで、省エネ住宅を建てる、あるいは購入する際にどのような点に着目すればいいのか、一級建築士の大野さんにお伺いしました。省エネ住宅にエアコンを設置する際のポイントについても紹介します。

省エネ住宅とは?

大野さんによると、省エネ住宅を簡単に言い表すと「暖冷房エネルギーの消費を抑えることができる、省エネ性能の高い住宅」を指すのだそうです。さらに、エネルギー消費を抑えるだけでなく「快適な住宅」でもあるのだとか。

一般的な住宅との違い

「一般的な住宅との消費エネルギーの違いについては、各家庭で消費量も異なるため単純比較が非常に難しいのですが、現在政府が目指している省エネ基準の電力量を『100』とすると、一般的な住宅は『120〜150』、あるいはそれ以上の電力を使用してしまうという印象です。

省エネ住宅は熱が逃げくい構造のため、一般的な住宅に比べ、住む人が『快適な体感温度』を感じやすいという特徴があります。そこにエネルギー効率の良い電気設備を組み合わせることで、省エネにもつなげているのです。

つまり、人にとっては『健康かつ快適に過ごせる家でもある』と捉えられます」

住宅における3つの省エネ性能

省エネ住宅における重要な省エネ性能としては「断熱」「気密」「日射遮蔽」の3つが挙げられると大野さん。これらの性能が揃うことで、家庭で使用するエネルギー量を効率的に削減することが可能に。

①断熱性
「断熱性は、シンプルにいうと『建物から熱を逃がさない』という考え方です。逆に言えばその分だけ、例えば外気温などの外からの影響も受けにくいのです。つまり冷房の効きもよいため、エアコンも最低限の稼働で、家の中を快適な温度にできるのです」

②気密性
「気密性は、断熱性と密接に関わってきます。高断熱の家はお部屋の空気を逃さず、夏はエアコン冷房の涼しいまま、冬は暖房の温かいままの温度を閉じ込めることができますが、気密性に難があると、せっかく閉じ込めた快適な温度を逃がしてしまうことになります。そのため気密性の高さも重要な指標です。

③日射遮蔽性
「日射遮蔽に関してはすなわち『真夏の太陽光のカット』ですね。日本の夏は、日照時間が長く、西日も強いため、夕方から夜は特に暑く感じます。それが家の中に入ってきてしまえば、床や壁面が暖められて、夜になっても室温が下がらないという結果につながるため、日射をいかにカットするかを考えます。特に効果的なのは『家の中に入ってくる前にカットする』ことです。室内側のブラインドでも日射をカットできますが、窓の外で遮蔽した方がより効果的です。屋外設置型ブラインドや日除けのための落葉樹を植えるなどといった計画も有効的です。

断熱性能の数値はすごく優秀なのに、前述した気密性と日射遮蔽性が悪いため、省エネ効果が著しく薄れてしまっている住宅も散見されます。最近は温熱環境について詳しい建築士の方も増えていますので、まずはそういった点についてアドバイスしてくれる専門家の方も探してみてください」

省エネ住宅の基準

省エネ住宅かどうかの判断基準のベースとなるのは「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)です。さらに、それを上回る基準として「低炭素建築物の認定基準」、「ゼロエネルギーハウス(ZEH)基準」も定められています※1

「建築物省エネ法は2022年に改正※2
されたため、断熱等級などが変わっている点には留意が必要です。2025年からは、全ての住宅で、ある一定の省エネ基準を満たさないと新築は認められないことに。

今現在マイホームの取得を考えている方は、ちょうど移行期にあたるため、これらのことを知らないまま家を購入してしまうと、省エネ基準に達していない住宅となってしまいかねません。とはいえ2021年4月からは、ハウスメーカーなどから新築住宅を購入するときなどには、建築士から省エネ基準適合・不適合の説明をすることが義務付けられましたので、こういった話を聞く機会はあるはずですが…」

※1 経済産業省 省エネポータルサイト『省エネ住宅』
※2 国土交通省『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について』

省エネ住宅に関するよくある誤解

「省エネ住宅関連では、『太陽光発電パネルがついてるから省エネ住宅』という誤解もよくされています。もちろん“省エネ”にはなりますが、本来の省エネ住宅の意味は「暖冷房エネルギーの消費を抑えること」ですから、電気を作っているからといってどんどん消費するというのでは不十分です。

東京都では、住宅への太陽光発電の設置が義務化される方向で進んでいますが、電気代が上がると思われている方も、たびたびいらっしゃいます。ですが、本当の省エネルギー住宅であれば、光熱費の上昇を最小限に抑えられるはずです。また、断熱性の良い住宅ではエアコンで部屋全体がすぐに温まるため、床暖房が不要になることも珍しくありません」

「省エネ住宅」はマンションにも当てはまる?

「省エネ住宅の定義は、もちろんマンションにも当てはまります。ホームページやパンフレットなどに『長期優良住宅』『低炭素住宅」『ZEH-Mマンション』『省エネ基準適合』と記載があれば省エネ住宅といえるでしょう。

実はマンションの方が戸建住宅よりも断熱性に配慮されていることが多いです。鉄筋コンクリートは断熱性が悪いため、むしろ断熱工事を前提に設計されているはず。

なお、断熱性の良さと、気密性・日射遮蔽性はそれぞれ別問題です。それぞれがバランスよく計画されているかは、不動産屋さんに「省エネマンションの認定を取得しているか」などを尋ねてみてください」

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