子どもが【性的脅迫】の被害者にならないために…親が今からやっておきたいこと

第3回 サイバー犯罪「セクストーション」から子どもを守る
‘13年に三鷹市でおきた女子高生のストーカー殺人事件は、「セクストーション」から「リベンジポルノ」へ発展したと言われている。「セクストーション」とは、「sex」(性的)と、「extortion」(脅迫)という組み合わせの造語で、「性的脅迫」という意を表す。性的な画像を軽い気持ちで送ってしまう未成年にも、「セクストーション」の被害に合う可能性は十分あるという。子どもを被害者、加害者にしないために、今から親が気を付けなければならないことはあるのだろうか。インターネット問題に詳しい、メディアジャーナリストの渡辺真由子氏に話を聞いた。

●そもそもセクストーションとは?

性的脅迫「セクストーション」は、裸の画像などをネタにゆする手口のことを指すが、三鷹市女子高生殺人事件の犯人は、被害者の女子高生に向かって「復縁しなければ、この画像をばらまくぞ!」と交際していた時に撮影した性的画像を元に脅していたと言われている。だが、被害者女性はその脅迫に応じず、結果、写真を拡散するリベンジポルノから殺人事件へと発展する悲劇となってしまった。

実は、表面化しない未成年のセクストーション被害は、今、日本でも増加傾向にある。

「例えば、ある中学生がネット掲示板に悪口を書かれ、削除依頼をしたところ、管理人の高校生から『キミの裸の画像を送ってくれたら削除するよ』と言われました。しかたがないので1回送ると、『もっと送らないと前の写真も一緒にバラまく』と脅されたそうです。このように、未成年のセクストーション被害は、ごく身近なところに潜んでいると言えます」(渡辺氏 以下同)

1度でも写真を送ってしまうと、その後何度も脅されることになりかねないのだ。

セクストーション被害少女と母

● 中高生を狙うセクストーション

「SNSなどで知り合った相手は、時間をかけて信頼関係や恋愛関係を築き、『ちょっと服を脱いでみて』などと言葉巧みに性的な画像を要求してきます。しかし、一回画像を渡してしまうと、デジタル画像は、簡単にコピーされて急速に拡散されてしまいます。家庭でも日頃から、“デジタル画像を1回でも送ってしまうと、どういうことになるのか”を話しておくことが必要ですね。もしも自分の顔が写った性的な画像が拡散すると、就職や結婚など、“将来に影響することもあり得る”としっかり教えてあげてください。画像を渡すということは、爆弾のスイッチを相手に渡すようなものなのです」

●もし画像を送ってしまっても怒るのはNG

だが、もしもわが子が裸などの性的な画像をSNSで送ってしまったとしても、「親は怒らないでほしい」と渡辺さんは語る。

「もしセクストーションの被害にあったとしたら、親が怒ったところで画像が戻ってくるわけではありません。子どもはとても傷ついているのに、最初の段階で責めてしまうと、それ以上何も話してくれなくなってしまいます」

親としては、「エッチな画像を撮るなんて!」とショックを受けるだろうが、最近の子どもたちは、赤ちゃんの頃からデジカメやスマホなどで簡単に写真を撮る風潮があり、その延長で、気軽に服を脱いだ写真を撮ってしまうこともあり得るという。怒りたくなっても、そこはぐっと我慢。親は、セクストーションの被害に一緒に向き合うべきなのだ。そして必要であれば、警察や民間団体などの相談機関に被害を訴えよう。三鷹市の女子高生のような悲劇が2度と起きないように…。


(取材・文/谷亜ヒロコ)

お話をうかがった人

渡辺真由子さん
渡辺真由子
メディアジャーナリスト 慶應義塾大学SFC研究所上席所員
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程を経て現職。元テレビ局報道記者。ネット時代の子どもを取り巻く「性」や「いじめ」などの人権問題を18年以上にわたり取材し、賢くSNSと付き合うノウハウを伝授。豊富な取材経験に基づく、子どもの心理分析に定評。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程を経て現職。元テレビ局報道記者。ネット時代の子どもを取り巻く「性」や「いじめ」などの人権問題を18年以上にわたり取材し、賢くSNSと付き合うノウハウを伝授。豊富な取材経験に基づく、子どもの心理分析に定評。