防災教育をしない・できない5つの理由とその回答

防災教育をしない・できない5つの理由とその回答

なぜできない?

 長年防災教育に関わっていると、実践校・団体がだんだんと増え、内容がより豊かで多様になってきていることを実感します。ただ、爆発的に広がっているとまでは言えません。どちらかというと、素晴らしい実践は一部の、近未来の被災が想定される地域や過去の被災体験から学ぼうとしている地域、そして文部科学省や教育委員会の研究指定校に限られており、多くの地域ではただ避難訓練を繰り返す、ちょっとがんばって防災訓練にとりくむ、外部講師に丸投げする、というのが実態です。なぜ防災教育は爆発的に広がらないのでしょうか。
 簡単な解決策はすべての人が防災を学ぶ機会を設けること、つまり教科にすればいいのです。ただ、現行の学習指導要領は始まったばかりで、10年ほどのスパンで改訂されるので、しばらくは無理です。となると、現状では広がりを阻害する要因を丁寧に取り除いていく以外に方法はありません。
 私は、兵庫県立舞子高等学校環境防災科の準備(2000年4月)とスタート(2002年4月)以来、ずっと防災教育に携わってきました。その間、多くの教職員の皆さんと話をしてきたのですが、「防災教育をしない・防災教育ができない」という教職員の皆さんが指摘してきた理由は、大きく次の5つに分類できると考えています。
・ 「自分は災害に遭わない」から防災教育は不要だ。
・ 大切なのはわかるが「時間がとれない」。
・ 時間が取れたとしても「何をどう教えてよいかわからない」。
・ 中学や高校では「進路保障につながらない」。
・ 「自分には災害体験がない」ので自信を持ってとりくめない。

自分は災害に遭わない

阪神・淡路大震災(1995)以前は、ほとんどの人がそう考えていたかもしれません。しかし、それ以来、日本列島は頻繁に揺れています。水害も毎年の様に多発しています。水害の被災地をレポートするニュースでは、被災者は「まさか自分が」と繰り返します。自分は災害には遭わないという油断は禁物です。
根拠のない安全感を持っている人でも、日本のどこかで毎年の様に災害が発生している事実は認めてくれるでしょう。それならば、被災地を支援するための防災を学ばせませんか。被災地に服を送るなら古着ではなく新品を、雑多な物品をひとつの段ボール箱に入れて送るのではなく1箱に1種類を入れて(例えばタオルばっかり、下着ばっかり)送ると、受け取る側の分類の作業が省ける、逆に子ども向けの勉強道具パックとかおもちゃパックなど、意図を持っていくつもの品目をひと箱に入れて送る、等々、過去の災害で学んだ教訓を生かすのです。

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