ジャニー氏の性加害問題がKinKi Kidsの“絆”物語に……女性週刊誌の変わらない御用体質


「女性セブン」9月28日号(小学館)(C)サイゾーウーマン

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 ある作家がとある週刊誌コラムでジャニーズ事務所の性加害問題を取り上げていた。が、しかし論拠なく東山紀之を持ち上げ、これまた根拠なく彼のセクハラ疑惑を強く否定、そして、なぜか中居正広と松本潤をけちょんけちょん。さらに性加害の問題の考察も自身の自慢を交えるなど、疑問符だらけのものだった。自身の作品に東山を出演させたがっているこの作家氏。そのためのアピールか?

第667回(9/14〜9/19発売号より)

1位「KinKi Kids硝子の決断『光一の怒り』『剛の沈黙』」

「木村拓哉『やっちゃえ!』白熱の極秘決起集会」

「二宮和也『ハリウッド進出暗礁』で揺れるジャニーズ愛」

(「女性セブン」9月28日号)

2位「総力取材!『ジャニーズ』の名が消える日」

「緊急アンケート 契約スポンサー85社が明かした『ジャニーズとの今後』(週刊女性10月3日号)

3位「羽生結弦が守る結婚相手はバイオリニスト!」(「週刊女性」10月3日号)

※「女性自身」は合併号休み

 ジャニーズ事務所の会見が開かれたことで、先週から“重〜い腰”を“イヤイヤ”上げて性加害問題を取り上げ始めた女性週刊誌。だが、その内容はいまだに正面からこの問題と向き合おうとしない記事ばかりで、その忖度ぶりや御用体質は何ら変わってはいなかった。そして今週もまた同様だ。

 まずは性加害問題で、ジャニーズ援護射撃を何度も行ってきた「女性セブン」。今週もかなりエグい。3本の関連特集を組んでいるのだが、その内容は性加害の本質から目を背けるような“悲劇のヒーロー作戦”とでもいうべきものだ。

 まずトップは、ジャニー喜多川氏から最も寵愛を受けたグループのひとつKinKi Kidsについての記事だ。事務所の性加害問題と東山紀之らの会見を受け、堂本光一はブログでジャニー氏を非難するコメントをする一方、剛は沈黙を貫いている。そんな2人の対照的な対応を紹介したのち、記事ではこんな解説が。

「希薄な関係が取り沙汰されたこともあるキンキの2人ですが、むしろお互いが普段とは正反対の反応をすることで、それぞれをフォローし合っているようにも感じられます」

 ジャニー氏の性加害がなぜか、KinKi Kids2人の“絆”物語にすり替わっている。それだけではない。事務所の危機に対し2人が共に立ち向かうとして紹介されるのが、以下のスケジュールだ。

「年内に新曲がリリース予定で、すでにミュージックビデオの撮影は済んでいます。加えて、年内には3年ぶりにアルバムも発売されます」

 性加害問題を冒頭にちょろっと紹介して、その後はKinKi Kidsの美談に活動PR! さすがです。

木村拓哉を美談で擁護し、二宮和也の独立を阻止する「女性セブン」

 そして2つ目の「セブン」記事は木村拓哉関連。ジャニーズ事務所の会見後、キムタクはインスタグラムで「show must go on!」と投稿、このフレーズはジャニー氏の口癖だったことで大炎上したが、記事ではこの言葉は「演劇界で古くから使われている慣用句」であり「ジャニー氏を擁護する意図がなかったことは明らか」としてキムタクを庇う。

 そして、木村が後輩グループに声をかけて決起集会を行ったこと、またジャニーズという社名を残すのは所属タレントたちの意思でもあると紹介、さらにさらに、和歌山のジャニー氏のお墓に会見後新しい花が手向けられていたエピソードで記事を締めくくるのだ。もちろん一貫して美談トーンとなっている。

 最後は、嵐・二宮和也関連記事。俳優としてハリウッド映画に出演するなどその評価が高い二宮だが、しかし記事ではある危惧が表明される。ジャニー氏の性加害問題は海外でも報じられている。特に欧米では性犯罪は日本より厳しく糾弾される。よって今後、二宮やジャニーズタレントの海外進出のネックになるのでは、と。ジャニーズ事務所から離れハリウッド進出を見据える二宮に“独立阻止”の釘を刺す、ってことか。いまだジャニーズ御用雑誌「セブン」のジャニーズ擁護3本立て特集だった。

アンケートでお茶を濁す「週刊女性」

 そして、ある意味「女性セブン」よりひどいと言えるのが「週刊女性」だ。性加害問題に関し、“徹底取材”“総力取材”などと謳っているが、中身を見て唖然呆然。ジャニーズ事務所の社名継続に関し、取材などではなく“全国の女性1000人にインターネットでのアンケート”を行い、その結果を誌面で紹介しているだけなのだから。

 ここ最近、「週女」ではやたらとアンケート企画が多く見受けられるようになった。アンケート会社に依頼し、例えば“好きな俳優”とか“信頼できるコメンテータ”とかの調査をしてもらい、その結果を誌面で紹介する。安易で安価な企画だが、その内容が“好き嫌い”などどうでもいいことならまだいい。

 しかし、これだけ大きな問題となっているジャニーズ事務所の性加害問題とそれに伴う社名存続問題を、一般人への丸投げとも言えるアンケートでお茶を濁すとは。ジャーナリズムの放棄か――。総力取材が聞いてあきれる。

 さらに唖然呆然なのが「週女」の2本目のジャニーズ特集もアンケートだったこと。ジャニーズと契約しているCMスポンサー企業85社に、今後のジャニーズとの契約や取引についてアンケートを行い、その結果を誌面で紹介している。確かに性加害問題が大きく取り上げられるようになって、スポンサーが次々とジャニーズから撤退を表明し、大きな話題となっている。

 しかし、スポンサー企業だってジャニー氏の性癖を知らなかったでは済まないはずだ。見て見ぬ振りを何年にもわたってしておいて、いまさら逃げ出すとは無責任甚だしいと思うが、記事にはそうした是非についての記載も考察もなし。単にアンケート結果を紹介するのみだ。

 今回の「週女」のジャニーズ特集には多くの問題が内包されていると思う。スポンサー企業に対してジャニーズとの付き合い方を問うているが、では「週女」自身はどうなのか。今回の問題はマスコミの癒着、忖度問題でもある。にもかかわらず、今後「週女」はジャニーズとの付き合い方を変えるのか否かについて、何の表明もしていない。人様のことを取りざたする前に、自分たちの落とし前をつけるべきではないのか。

 でも、そんな気はさらさらないらしい。なにしろ今週の「週女」表紙はSexy Zone。巻頭カラーグラビアにもSexy Zoneの写真とニューシングルや3大ドームツアーのPR対談が掲載されている。さらに巻末カラーグラビアはSnowMan・渡辺翔太とSixTONES・森本慎太郎の舞台PRだ。このPR三昧、一体、何を考えているのだろう。

 さらに言えば、「週女」はジャニーズ事務所から理不尽な圧力を受けた当事者でもある。今から22年前の2001年、「週女」を発行する主婦と生活社のアイドルインタビュー雑誌「JUNON」にジャニーズ事務所が目の敵にしていたDA PUMPの広告が掲載された。同号にはSMAPの香取慎吾が登場する目玉企画特集もあったことで激怒したジャニーズは、「JUNON」そして同社発行の「週女」を出入り禁止にした。そのため「週女」はアンチ・ジャニーズに大きく舵を切っていく。

 その後両者の関係はSMAP独立騒動を前後し修復されたと言われるが、そんなジャニーズ圧力の当事者である「週女」だからこそ、ジャニーズタブーに性加害、そしてマスコミ忖度を考える上でも今、その実態を明らかにするべきではないのか。現在の誌面を見ると、そんな気はさらさらないみたいだが。

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