【専門家に聞く】新型出生前診断とはどんな検査?

第1回 人に聞けない”新型出生前診断‎”のコト
2013年4月からスタートした「新型出生前診断(NIPT)」。従来の出生前診断に比べると検査が簡易で、かつ高い確率で胎児の染色体異常が分かることから注目されています。

現在、新型出生前診断は日本医学会の認定部会が認定・登録した全国62施設(2016年11月6日現在)で行われていますが、具体的にどのような検査になるのでしょうか? 千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部に聞きました。

●血液検査3種類の染色体の病気を判別

新型出生前診断の技術が画期的だとされるのは、わずかな量の血液で、胎児の染色体に病気があるかどうか高い確率で判別できるという点です。

「これまでも、お母さんの血液で検査をする方法はありましたが、新型出生前診断では胎児のDNAを直接分析できるようになったため、陽性(疾患がある)・陰性(疾患がない)の判別の確率が上がります。ただ、新型出生前診断は厳密にいうと『確定診断』とは考えられてはいません。そのため、陽性反応が出た場合は、原則として羊水検査を受けることが定められています」(千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部)

また、すべての染色体の病気が診断できるわけではなく、対象になるものは次の通り。

■13トリソミー
13番目の染色体が3本あります。

■18トリソミー
18番目の染色体が3本あります。

■21トリソミー(ダウン症)
21番目の染色体が3本あります。

3種類の染色体異常の重症度を平均で比較すると、21トリソミー<18トリソミー<13トリソミーの順となります。いずれも、知的障害や先天性心疾患、低身長などの症状がみられます。しかし、重症度や症状の種類は、赤ちゃんごとに違いがあります。

なお、「陰性」の場合、その精度は99.9%といわれていますが、3種類の染色体異常の可能性についてのみの結果であり、その他の染色体異常がある可能性は否定できません。また、「陽性」の場合は、陰性ほど的中率が高くはありません。

【専門家に聞く】新型出生前診断とはどんな検査?

●新型出生前診断受診の条件とは?

なお、現在日本ではすべての妊婦さんが受診できるわけではなく、条件も決められているようです。具体的な内容は次の3点です。

・出産予定日時点で妊婦さんが35歳以上の場合
・超音波検査などで染色体異常を罹患している可能性が高い場合
・過去に、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーを患った赤ちゃんを妊娠・出産した経験がある場合

また、検査の予約については、基本的には本人が申し込みをします。

「基本的には、妊婦さんが直接申し込みをするかたちになります。ただ、自由診療なので、地域や病院によって費用にも幅がありますが、おおよそ20万円前後で受けることができます。また、新型出生前診断を受ける方には、必ず遺伝カウンセリングを実施していただくことになっています」

検査について誤解するケースも多いことから、新型出生前診断では遺伝カウンセリングが必須とされています。遺伝専門医や遺伝カウンセラーが検査内容を丁寧に説明してくれるだけではなく、不安を抱える妊婦さんの心理的なサポートも行ってくれます。

生まれてくる赤ちゃんの健康を願うママたちにとっては、新型出生前診断を受けるかどうかは悩んでしまうところかもしれません。もし悩んだときには、検査を実施している病院を訪ねてみましょう。

(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)

出生前診断の理解を深める

出生前診断 (ちくま新書)
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820円
新型出生前診断(NIPT)が始まったが、どういう検査なのか、何がわかるのかが一般にも、医療関係者にもあまり理解されていない。いったいどのような考え方・心構えで検査にのぞめばいいのだろうか。本書は、出生前診断にまつわる事実をできる限り客観的に、わかりやすく解説し、診断を受けるべきか迷う人々に、考え方に応じた指針を与えるものである。好むと好まざるとにかかわらず、もはや出生前診断という技術に関与せざるを得なくなった現代人に、最新知識を提示する。
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出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来 (朝日新書)
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70年代に始まり、次々に登場する胎児診断技術。黎明期から最先端事情まで、取材で浮かび上がる出生前診断の「全容」。晩産化が進み、産科医療も進歩するなかで、多くの女性たちが重い問いに対峙し、葛藤している。体験者の生の声、医療者の賛否両論に日本で唯一人の出産ジャーナリストが迫る。
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新型出生前診断と「命の選択」 (祥伝社新書)
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妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新型出生前診断」が、二〇一三年四月から日本でも始まった。また、遺伝子を調べることによって、将来発症しやすい病気や確率も判明するようになっている。このような医療技術の進歩は基本的には望ましい。だが、最新技術が命に関わる領域に踏み込んだことで、患者と家族は大きな選択を迫られるようになった。その結果、自らの判断が正しかったのか悩む人が増えている。それに対して私たちはどう考えればいいのだろうか。医学の進歩に、心のケアや倫理は取り残されていないだろうか。現状と課題を、精神科医の立場から考える。
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