これは共働き家庭の子どもが小学校入学にともない、保育園ではケアされていた保護者の負担が増大することを表した言葉だ。代表的なのは、夏休みなどの長期休暇の過ごし方や保育園のように融通が利かない学童との兼ね合い、さらにはPTAなどの保護者活動や毎日の宿題などのケアなど。確かにどれも仕事を持つ親への負担は軽いものではい。
だが、そういった負担は近年急に増加したものではないのも事実。なぜ、近年になって“小1の壁”という言葉がクローズアップされはじめたのか? 働く女性のサポートのために活動するキャリアカウンセラーの藤崎葉子さんに聞いた。
●民間学童枠のために1年前からプレ会員になるケースも
「企業で働く兼業ママはたくさんいますが、日本ではまだ子どもが未就学児というケースが圧倒的に多いのが現状。例えば子どもが1歳で育休から復帰した場合、そこから6年以上継続して働く人はまだ少数派なのです。しかし、ようやく小学生以上のお子さんを持つ層が増えてきたので、それにともなって“小1の壁”が注目を集めているという背景もあります」(藤崎さん 以下同)
また、企業が取り入れている育児制度とも関係があるという。
「働くママには時間短縮勤務、いわゆる時短を利用している人もいますが、その利用期間が小1の春までというケースが多いこともありますね。その場合は、入学の負担と時短終了のダブルパンチになってしまいます」
藤崎さん自身も現在小1の子どもを持つ母親として、現在壁に向き合っている最中だという。
「実際、対峙してみると確かに大変です。例えば、夏休みは学童に預けますが、給食がないので毎日お弁当を作る必要があります。さらに学童の終了時間までに帰宅できない人は、夜遅くまで対応可能な民間学童を利用しています。民間学童は数も少なく、保育園のときから“プレ会員”になって入学時に席を確保する人も少なくありません」
学童の終了時間や民間学童の状況などは、当然ながら地域や学区などによってまったく事情が違う。不安な人は早めに情報収集をして、できる限りの対策を立てたほうが良さそうだ。
●学童が終わる小4と中学受験……壁はまだ続く?
とはいえ、育児と仕事との両立で壁となるのは、何も小1だけではない。自治体や学校によっても違うが、学童保育の多くは小3までという制限が設けられている。そうなると、それ以降を“小4の壁”と感じる人もいるだろう。
「小1の壁に対峙している人よりは数が少ないかもしれませんが、小4になって放課後をどう過ごそうか? と悩んでいるママは多いです。仕事を持ちながら子どもの中学受験を考えている人は、さらにまた大きな壁ができる。この先、兼業ママの継続勤務年数がさらに長くなると思いますので、そうなると小4や中学受験の壁が話題になるかもしれませんね」
つまり、何も小1だけが特別というわけではないのだ。あまり過剰に恐れず、今できる対策にベストを尽くすことに集中することが得策かもしれない。
(高山 惠+ノオト)