過去の災害は、危険を知るための重要な手がかりに。地域で起きた過去の災害や歴史を調べてみましょう!

過去の災害は、危険を知るための重要な手がかりに。地域で起きた過去の災害や歴史を調べてみましょう!

大きな災害が発生した時には「まさか、自分が被災するとは思わなかった」「こんな大災害は、想定外だ」などとたびたび言われます。しかし、ほとんどの災害は、発生した地域での被害は想定内のものです。それは計算上のもので、防災などの専門家だけがわかっているものなのではないかと思われるかも知れません。確かに、計算上の被害想定も出されていますが、専門家でない人たちも地域の過去の歴史などを知ることで推測することができるものなのです。
大きな災害が発生し多くの被害が出た場所では、長い歴史を振り返るとたびたび災害が発生し、被害が出ていることがわかります。そして、注意深く街を見たり、地名の由来などをたどると、そこには「ここには、こんな災害が発生したことがあるので気をつけなさい」という先人のメッセージを読み取ることができます。
その背景には、土地の成り立ちや、地盤の特徴などの地域の特性があります。地形などは、数十年、数百年の時を経ても、それほど大きく変わることはありません。過去に水害や津波、土砂災害などが発生した地域では、再び災害が起きるリスクが高いと言えるでしょう。過去に発生した災害とあわせて土地の成り立ちなど、ハザードマップを少し深く読み解くことからも、それに気づくことができるでしょう。

地域の危険性をよく知り、日頃からの備えや対策に活かすためにも、地域で起きた過去の災害や歴史などを調べてみましょう。
過去の災害は、危険を知るための重要な手がかりになります。

危険な地理的条件

自然災害による被害をできるだけ少なくするように、防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図、ハザードマップ。自治体などから配布されたり、ウェブなどからも誰でも見ることができます。
そのハザードマップの元となっているのが、その地域の土地の成り立ちや災害の原因となる地形・地盤の特徴、過去の災害履歴、避難場所・避難経路などの防災地理情報です。防災地理情報は、「土地条件図」「火山土地条件図」「都市圏活断層図」「沿岸海域土地条件図」などの“主題図”に記されています。それぞれの主題図を国土地理院で作成しており、誰でも購入することができます。

地震が発生した際に「液状化現象」「地盤沈下」がおこるリスクの高い地理

大きな地震が発生した時に、被害が拡大する可能性の高い特徴のある場所があります。

例えば、埋立地や河口付近、干拓地などの、ゆるく堆積した砂の地盤(砂地盤)の地域です。特に、地表面から10m以内に地下水があるような地下水位の浅いところほど、リスクが高くなります。

こうした場所は、大きな地震が発生した時に「液状化現象」の被害が広がる可能性が高いのです。

海沿いの湿気の多い低い土地で発生しやすい事は以前から言われていましたが、平野部や都市部でも埋立地や昔の河川を埋めた土地など、砂地盤になっているところなどでは発生します。

砂地盤のところでは、普段は砂粒どうしが並んで接触していることで強さを保っています。それが、地震の大きな揺れによって地盤全体が変形して、隙間の水を押し出す力が働いてしまうと、砂粒どうしが接触する力を弱めて、泥水のような状態になります。それが「液状化現象」です。

液状化現象が発生すると、地面から水や砂を吹き上げる「噴砂現象」が起こったりします。建物を支える力も失われ、大きなビルや橋梁が沈下したり、マンホールや地下に埋めて設置されている水道管などが浮き上がって(抜け上がり)きたりします。やがて水が抜けると、再び砂は締めかたまりますが、液状化した地層は大きくずれ動き、地滑りや、盛土されていたところが崩壊したり、地盤がは沈下したビルは倒壊するなどといったことが起こります。もちろん、道路やライフラインへも大きな影響がでます。

埋立地などはリスクの大きなところですが、住んではいけないというわけではありません。リスクを知った上で、できるだけ被害を最小限にとどめられるように、対策や備えをしておくことが大切です。

例えば、住宅などを建築する際には地盤の深くまで杭を打ったり、マンションなどの大規模建築ではコンクリートを打設するなどして地盤をしっかりと固めておく対策で、リスクを減らすことができます。日常では、水の備蓄をしっかりとするなど、ライフラインが止まっても生活できるような備えをしておきましょう。

大雨が降った際に「氾濫」がおこるリスクの高い地理

大雨が降った際に、被害が拡大する可能性の高い特徴のある場所があります。

例えば、暗渠(あんきょ)といわれる、川や水路を埋め立てたり、地下に残したままフタをした場所があるところです。街の中では、暗渠の上を緑道として自然豊かな遊歩道のように整備されているところも多くあります。一見すると、普通の歩道や道路、公園のようですが、その下は元々川や水路だったところで、まだ水が通っていたり、周りから低い土地になっていることも多々あります。
こうした場所では、大雨が降った際には内水氾濫が起こるリスクが高くなります。

他にも、「三角州(さんかくす)」や「デルタ地帯」と言われる、枝分かれした2本以上の河川と海で囲まれた三角形に近い形をした場所や、過去に繰り返し発生した川の氾濫で土砂が堆積してできた「氾濫原(はんらんげん)」と言われる場所も、冠水しやすい土地です。

また、河川では「鵜の首(うのくび)」や「ボトルネック」と言われる、急激に川幅が狭くなるところでは、これまでも、堤防が決壊して周辺に大きな被害を出しています。

「地名」から推測できる土砂災害や洪水などの災害のリスク

地名は、昔の人がその土地の特徴や目印として呼んだものが、代々受け継がれてきたものが多くあります。近年の市町村合併などで新しく付けられた地名や、かつてその土地を治めた領主などにちなんだもの物もありますが、かつては川が流れていたことや湿地だったこと、大きな災害があったことを残している地名もあります。

地名に使われている漢字には意味があります。また、昔とは違う漢字を使われていて言葉の音だけが残されているものもあります。

地震が発生した時に「液状化現象」が発生する可能性のある地名

例えば、梅田などの「梅」がつく地名。梅林だったことから「梅」の字が使われているところもありますが、埋立地だったことから、「埋め(うめ)」の音だけを残して「梅」の漢字を使われていることがあります。

また、水田だった地域には「田」や「新田」という地名が残っているところがあります。「田」が使われている、かつて水田だった地域は、地下水が残っていたり、地盤も軟弱なところが少なくありません。
「袋」や「窪(久保)」のついた土地も、池や湿地帯だったところを示します。水が溜まりやすい場所を示す地名で、大雨が降った時には洪水にも注意が必要です。
こうしたところでは、大きな地震が発生した時に、液状化現象や地盤沈下が発生するリスクが高くなります。

大雨が降った時に「洪水」「川の氾濫」などが発生する可能性のある地名

複数の河川が合流する場所や、河川の流れが蛇行したり急に狭くなっているようなところでは、大雨が降った時に近くの河川が決壊や氾濫し、低地に水が押し寄せて大きな被害が出ることがあります。
そうした、川の合流地や皮川が蛇行していること示す地名もあります。
「合(あい)」や「枝・江田(えだ)」「沢(さわ)」「又(また)」「和田(わだ)」「宿(しゅく)」などが、川の合流地を示す地名。
「鎌・蒲(かま)」「熊・隈・曲(くま)」「龍・竜(りゅう)」などは、川が蛇行し、かつて決壊や侵食したところの地名によく見られます。

かつて土砂災害が発生したことを示す地名

江戸時代以前の人々は、土石流を蛇や龍のような生き物が谷を下ってきた痕跡と考えたそうです。土石流の跡を「蛇抜け」と呼ぶこともありました。
そのため、かつて土砂災害が発生した地域には、「蛇」や「龍・竜」といった漢字を使った地名が多く残されています。
また、山を裂くことから「桜(さくら)」や「鷺(さぎ)」、水が渦を巻いて激しく山を流れる様子(たぎる)から「滝(たき)」、山が欠ける様子から「柿(かき)」などがつく地名もあります。

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