オフィスで仕事していると、同僚が電話のたびに席を立ち、ケータイ片手に背後をウロウロしたりすることがよくある。駅など公共の場でも見かけるし、筆者も電話中にウロウロして「邪魔!」と迷惑そうな視線を向けられたことが何度もあるのだ。なんで人は電話中にウロウロしてしまうのか。
「電話は見えない相手との会話なので、緊張状態になり、ストレスを感じやすい。会話の相手が目の前にいないのに、まるでいるかのように話すのって本来不自然でしょう。ウロウロするなど体を動かす行為は、その緊張状態を緩和する効果があるんです。貧乏ゆすりと同じ」。そう語るのは、認知科学が専門の匠栄一・デジタルハリウッド大学教授。
じつは、電話中にウロウロするのは男性特有の行動ともいわれる。言語に関する脳の神経細胞は女性の方が発達し、彼女たちは言葉でのやりとりを楽しめる。一方、男性は話すことが不得意で、言語の神経細胞も体との連携が強い。だから、電話中の緊張を緩和するために体を動かすわけだ。
「そのため、ウロウロしているのはだいたい男性で、電話中に歩き回る女性は男性に比べて少ないはず。男性は、言語よりも体を動かすことに優位性を持っているともいえます。動く方が自分にとって自然なんです」
ただ、いくら脳の特性とはいえ、電話中に歩き回ると周りも落ち着かないはず。このウロウロするクセを直す方法はないのか。
「ひとつ効果的なのは電話で話す前に何かルーティンを作ることです。イチローはバッティングのときに一定の動きをしますよね。同様に、電話の前に立ち上がってみたり、背伸びするなどのルーティンを作り、ウロウロしない意識を植え付けるんです」
しかし、この効果も約5分しか続かず、電話のたびに立ち上がるのも迷惑(笑)。クセは無意識にやってしまうだけにやっかいなのだ。
(真屋キヨシ/清談社)