●NIPTでは“偽陽性”のケースもある
NIPTの結果が陽性だったとしても、胎児異常がないのに誤って陽性と判定される「偽陽性」のケースもあるそうです。そのため、引き続き羊水検査などの確定検査を受ける必要があるといいます。
「ただ、陽性であっても妊娠を継続する場合には、羊水検査などの確定検査を受けていただく必要はありません。また、NIPTの結果が陰性だった場合には、『偽陰性』となるケースが非常に稀なため、ご夫婦の判断で、羊水検査を受けずに終了することができます」(以下、千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部)
より精密な情報を知るには、母体に針を刺して羊水を吸引する羊水検査を実施することになるようです。
「もし、赤ちゃんの染色体について調べられることは全部知りたいという方は、NIPTを受けずに初めから直接羊水検査を選択されると良いでしょう」
●検査結果の受け止め方は人それぞれ
しかし、羊水検査で胎児異常が確定すると、冷静に受け止めることは難しいのではないでしょうか。
「涙を流される方も、冷静に受け止めているように見える方もいらっしゃいます。ただ、同じような反応をしているように見えても、子どもを育てることについての考え方や、すでに子どもがいる・いないなどの家族背景、人生経験などによって、それぞれの方々の心の中での受け止め方や思いは異なります。ですので、おひとりおひとりの気持ちに寄り添う遺伝カウンセリングが大事だと考えています」
現在の法律では、胎児異常を理由に妊娠中絶することは認められていません。しかしなかには、母体保護法の解釈の拡大によって、妊娠の継続を諦めるケースもあるようです。
「もし胎児異常が判ったらどうすればいいのかということは、誰にも言えません。100%正しい答えはありませんが、長期にわたって医師や遺伝カウンセラーがフォローすることが大事です」
いまの医療では胎児異常を治療することは困難です。しかし、生まれてくる子どもを幸せにすることができるのか、実際に胎児異常で生まれてきた子どもや親はどのような暮らしをしているのか、生まれてくる前に考える時間を設けることができるという意味では、検査の意義は充分にあるといえるかもしれません。
(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)