心のケアと一体的に進める防災教育の意義

心のケアと一体的に進める防災教育の意義

被災地では防災教育は避けるべきだ?

トルコ・シリア地震の被災地で子どもたちの音楽やスポーツにかかわる活動を支援する団体職員や学校の教職員の話を聞いてきました。防災教育には期待とともに大きな不安もあるようです。それは、災害で辛い体験をした子どもたちに防災の話をすると、辛い体験を思い出させてしまう、かわいそうだから防災教育はしないほうが良い、という考え方です。
私はそうではないと考えています。阪神・淡路大震災以降、国内外の様々な被災地で教職員や子どもたちと話をし、心のケアの専門家の話を聞き、防災教育の実践を見てきて、私は、防災教育と心のケアは一体的に進めるべきだという考えに至りました。
被災地では、防災教育を進めることへの不安があります。「地震」「津波」といった言葉を聞いただけであの時の体験を思い出して怖くなったり、不安になったり、体の不調を訴えたりする子どもがいるからです。だから被災体験を思い出させるような防災教育を一切排除すべきだという意見を聞くことが少なくありません。
また、子どもたちに無理やり被災体験を思い出させようとすると、回避の気持ちが働きます。いつまでも回避を続けることはPTSDの要因になるから、クラスの中に1人でも辛がる子ども、不安がる子どもがいる場合は回避をもたらす危険性のある防災教育はすべきではないという主張があります

学校外でも子どもたちは災害を思い出している

この考えは一見、子どもたちに寄り添う真っ当な主張のように聞こえます。でも、よく考えると、子どもたちに被災を思い出させるきっかけは学校での防災教育だけではないのです。テレビやインターネットを見ていると、突然被災のシーンが飛び込んできます。何より、家や学校の周辺に壊れた町が広がっています。そんな中で、不安や身体の不調を訴える子どもたちも出てきます。それは学校外で起こることだから、私たちには関係ないと教職員は言えるでしょうか?
「関係ない」と言えないのであれば、学校で、なぜそんな気持ちになるのか、どうすればその不安な気持ちが少しでも小さくなるのかをしっかりと教えたほうが良いと思います。心理教育です。同時に心と体をリラックスさせる方法も伝えておきたいと思います。リラクゼーションのやり方を教えて、日々実践してもらうのです。

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