でも、定年退職後に限らず、「夫が家に帰ってくると胃が痛くなる」「夫が家にいるだけで体調が悪くなる」などと感じる女性は意外と多いそう。
そうした女性たちの症状は、「主人在宅ストレス症候群」と呼ばれるとか。これを命名した黒川内科の黒川順夫院長に話を聞いた。
「女性たちの『主人在宅ストレス症候群』といえる症状に気づいたのは、20年ほど前でした。その頃はまだ男尊女卑の傾向が強く、ダンナさんのことを『主人』と呼んで立てているような女性に様々な不調が見られたのです」(黒川院長 以下同)
かつては男性がもっと家のなかで威張っていた。そのため、定年退職後でずっと家にいるようになると、女性は四六時中あれこれ命令されたり、気を遣わなければならなかったりと、負担に感じることが多かったそう。
そもそもこの症状に気づいたきっかけについて、黒川先生は言う。
「もともと体質的素質があるからだと思われがちな病気や症状について、『なぜ最近になって急に悪くなったのかわからない』という人が多く、そうした人たちについてよく考えてみると『最近、夫が定年退職した』という共通点が見られたのです」
●優しい夫でも、妻を束縛している可能性も?
でも、今の若い男性は亭主関白な夫ではなく“優しい夫”であることが多い時代。若い世代にも同様の症状があるのはなぜなのか。
「若い男性は威張ったところがなく、女性にも優しい人が多いかと思いますが、『束縛感』はあります。特に、趣味もなく、休日などはずっと家でゴロゴロしているような夫の場合、妻が外出するだけでも嫌な顔をしたり、やきもちを焼いたりしがち。すると、妻は自分の時間が持てず、窮屈な思いを募らせていくのです」
「主人在宅ストレス症候群」といえるのは、どんな症状なのか。黒川先生は代表的な例を挙げてくれた。
「ストレスから起こる病気は実に様々です。身体的症状としては高血圧や胃潰瘍、喘息、十二指腸潰瘍などで、心理的症状としては、自律神経失調症や、うつ状態、不安神経症や強迫神経症などがあります」
もし自分の不調の原因が夫にあると感じたら、一緒に過ごす時間を減らしてひとりの時間を意識して作るのがオススメとのこと。思い切って、休日などに一度距離を置いてみるのも良さそうだ。
(田幸和歌子+ノオト)