ならば叱らずに育てる方法はないのだろうか? 子どものパーソナリティー心理学を専門とするお茶の水女子大学基幹研究院・人間科学系教授の菅原ますみ先生に話を聞いた。
●「叱らないママ」を目指してはいけない
「子どもは基本的に、全員叱らなければならないもの。親の役割は、社会と子どもとの間に立ってルールを教えることです。まっさらな状態で生まれてきた赤ちゃんは、当然社会のルールなんて知りませんよね。そこを教えていく作業が“しつけ”なのです」(菅原先生 以下同)
そもそも、あなたが子どもを怒るのはどんな場面でだろう? 友達に意地悪をする、手づかみで食事をする、公共の場で大暴れする、片付けない、着替えない、朝なかなか起きない…。そういった道徳や社会、各家庭のルールを“違反”したときがほとんどでは?
「子どもはルールを知らない。そこが出発点ですから、まず教えていくことが大事です。問題はルールを知っていても守らないとき。といっても、大体の子どもはまず守りません(笑)。そのルールが守れるようになるまで、つまり習慣化するまで親はつきあってあげなければなりません」
●正しく叱るための2ステップ
ではどのような「叱り方」が効果的なのだろう? 著書『その叱り方、問題です!』(主婦の友社)のなかで、菅原先生は正しい叱り方について次のように述べている。
「2つのステップがあります。1つ目は、よくない行動をしたら、その瞬間にストップさせること。もし、わが子が友達を叩こうとしたら、手を押さえてでもやめさせてください。その場・その瞬間に必ずやるのがコツです。遠くから『やめなさーい』では効き目がないのです」
2つ目は、「目を合わせて、短い言葉で理由を説明する」ことだという。
「いけないことをやめさせた直後に、『してはいけない理由』を説明する。このとき、目線を合わせながら短い言葉で説明するのがコツです。長々話すとポイントがぼやけてしまいます」
いずれにせよ大事なことは、親が子どもと同じ土俵に立たないことだ。例えば、スーパーでお菓子が欲しいと泣き叫ぶ子どもに、親自身も感情的になって怒鳴りつけるのはまったくの逆効果だそう。
「子どもがやっていることが間違っているのなら、“怒る”という感情が湧くことは場面としては正しいんです。ただ、その感情を怒鳴り散らすなどの形でそのままぶつけるのはNG。そもそも効果がありませんし、エスカレートすると虐待にもなってしまいます」
親も感情のままに怒鳴ればいいというわけではない。実は「叱る」側にこそ、冷静さが求められるのだ。親はそのことを常に心に留めておこう。よいことをしたときはしっかりほめ、だめなときはちゃんと叱る。そのバランスを保つことが、子どもの健やかな成長につながるはずだ。
(阿部花恵+ノオト)