わが子は自分に似ている面もあれば、全然違う面もある。自分とは違う人間を育てることは、やはり想像以上に難しいことだ。
「個性は持って生まれたもの」といわれるが、本当にそうなのだろうか? 子どものパーソナリティー心理学を専門とするお茶の水女子大学基幹研究院・人間科学系教授の菅原ますみ先生に話を聞いた。
●そもそも、個性とはどういうもの?
「遺伝子と環境が相互作用しながら育まれていくもの、それが個性です。子どもの性格はすべて遺伝で決まるものではなく、遺伝が半分、周囲の環境や育て方が半分くらい。遺伝子と環境の合作が“個性”になるのです」(菅原先生 以下同)
そもそもの個性のルーツは「脳」にあるという。
「私たちの感情や行動はすべて脳がコントロールしている、つまり脳そのものが感情や行動にみられる個性を生み出している源なのです。では脳がどう作られるかというと、父親と母親それぞれから受け継いだ遺伝情報が関係してきます。どこかしら親の性質を受け継ぐものなんですね」
実はこの「個性」にどう向き合うかは、しつけにも大きく影響してくる。「しつけ=叱ること」と誤解されがちだが、叱るばかりがしつけではない。適切にほめ、ときにサポートし、バックアップすることも「しつけ」の一種だという。
「子どもが成長してくるに従って、その子自身の性格が見えてきますよね。得意なもの、不得意な場面はそれぞれに違うもの。わが子が不得意な場面を見つけ出して、適切に励ましたりフォローしたり、助け舟を出してあげたりする。それもまた親の役目です」
●しつければおとなしくなる、は幻想
「子どもなんてガツンと叱れば言うことを聞くだろう」と思っている大人は多いが、現実はそんな簡単なものではない。子どもの年齢や性質によって「ガツン」への受け止め方はまったく違ってくるし、そのやり方は有効でない場合のほうが多いのだ。
「ちゃんとしつければおとなしくなる、なんて幻想です。2歳児までは自分をコントロールする力、他人の心を想像する力はゼロだと考えて。0~2歳までの子どもは自分に気持ちがある、ということしかわからない。それが正しい姿なんです」
自分をコントロールする力が育ってくるのは、3、4歳を過ぎた頃からだそう。それぞれの個性がはっきりと浮かび上がり、得意なこと、不得意なことが見えてくるのはここからだ。
「例えば、もしもわが子がすごくシャイで集団で発表するような場面が苦手だなと気づいたら、子どもの不安が和らぐように親が助け舟を出してあげましょう。闇雲に背中を押すのではなく、少しずつ進んでいけるように心強いサポーターとなって気持ちを寄り添わせてあげてください」
逆に、自己主張が強くて場から浮きがちな子だったら、親が「コーディネーター」になって温度差を調整してあげるのも有効だ。マイペースすぎてだらだらしがちな子には、親が「マネージャー」として適度なプレッシャーを与えるという手もあるそう。
子育ては親と子の共同作業だ。子どもにばかり多くを押し付けるのではなく、子の個性に応じて親が柔軟に役割を演じていく。親自身にもそんな努力が求められるのかもしれない。
(阿部花恵+ノオト)