●外国の子どもより低い、日本の子どもの“自己肯定感”
文部省の『高校生の心と体の健康に関する調査』(2011年3月) によると、自分自身をどう思うかについて“私は価値のある人間だと思う”という回答は、次のような驚きの結果が…。
・アメリカ……………89.1%
・中国…………………87.7%
・韓国…………………75.1%
・日本…………………36.1%
「日本の子どもの自己肯定感がこんなに低いのです。なんだか悲しいですね」
そう話すのは、『一人でできる子が育つ テキトー母さん流 子育てのコツ』の著者・立石美津子さん。なぜ、こんな結果になってしまうのか?
「日本には、“謙遜の美徳”の文化がありますね。相手に敬意を表するために自分を低くみせる文化です。手土産を渡すとき、相手に見合ったいいモノであっても、“あなたのような方のお口に合いますでしょうか”の気持ちを込めて“つまらないものですが”という言い方をします。相手を高め良好な人間関係を保つための潤滑油のような言葉として使いますね。しかし、このような“へりくだりの言葉(謙譲語)”は、使いすぎると時と場合により自分自身にも、また褒めてくれた相手にもよくない印象を与えることもあります」(立石さん 以下同)
●子どもに“謙遜の美徳”は理解できません
特に、子どものことに対しては自分のことと一緒くたにして“へりくだり”をしない方がいいという。
「私が幼児教室で教えていたときに、ある保護者に“○○ちゃんは机の上の整理整頓ができますね”と、褒めました。すると、“いえいえ、家では散らかし放題なんです”と、こちらは心から褒めているのに、その親御さんは無神経に子どもの目の前でそう否定したのです。“せっかく私が褒めているのにその言い方はないなぁ”と思ってしまうのと同時に、その会話を聞いていた悲しそうな子どもの顔が印象的でした」
もちろん親の本心は違うのだ。
「本心は、自分の子がどうしようもないとは思っていません。一番可愛くて、すごく愛しているのです。でも、ここでも“謙遜の美徳”でついへりくだってしまうのです。“親バカだと思われたくない”“うぬぼれている親だと思われたくない”という気持ちがあるからです。こういうとき、外国のママたちはどうかというと、“まあ、ありがとうございます。嬉しいです”“私もうちの子はとってもいい子だと思います”と、自信をもって返してくるのです」
この違いが、実は子どもたちに大きく影響を与えるという。
「まだこの世に誕生して数年しか経っていない子どもたちは、この“謙遜の文化”を理解できません。だから、親が言った言葉をそのまま真に受けてしまいます。目の前で大好きな親から否定された傷は深く残ります。やがて、“自分には価値がない”と思うようになり、自己否定の思考回路が出来てしまうこともあるのです。ですから、他人からわが子を褒められたら外国育ちのママの真似をして、ぜひ“ありがとうございます。嬉しいです!”と言ってあげましょう。他人から褒められて親がそれを喜ぶ姿を見て、きっと子どもは心が震えます。そして、自分に自信が持て自己肯定感が高い子に育つのです」
たとえ、他人がわが子を否定することがあったとしても、親だけは応援団になりわが子を認めてやってほしいと、立石さんは話します。
「他人と比べて劣るところがあっても、子ども自身が他者と自らを比較することなく“自分は生きている価値がある”“自分が好き”でいられることは、困難を切り開いていくための大きな力、財産になるのです」
“謙遜の美徳”は日本が誇る素晴らしい文化。しかし、可愛いわが子のためにも、“謙遜の美徳”の使い方にはくれぐれも気をつけましょう!
(構成・文/横田裕美子)