●親に命令されて言う謝罪は、意味のない謝罪
「もちろん、わが子に非があるならば謝るのは当然です。しかし、相手の親からどう思われるかの体裁ばかりを気にして、その場を早く解決しようとママが怖い顔で“ごめんなさいは?”と怒鳴って機械的に謝る子ども。それはまるで条件反射する犬=パブロフの犬のようです。つまり、子ども自身が“いけないことしたな”“お友達にやりすぎちゃったな”とまだ思っていないうちから、親に“ごめんなさいは?”と命令されると、“親の言葉のオウム返し”、意味のない謝罪をするようになってしまうのです」
そう話すのは、『一人でできる子が育つ テキトー母さん流 子育てのコツ』の著者・立石美津子さん。では、そんなときはどう対処したらいいのだろうか?
「そんな時には、子どもの目線にしゃがんで、“おもちゃを欲しかったんだね。だからといってお友達をいきなり突き飛ばすことはいけないことだよ”と言い、それをしてはならない理由をまずきちんと説明しましょう。さらに、“お友達のおもちゃが欲しいなら、貸して! とお口で言おうね”と、どうすればよかったのか具体的に示しましょう。そして謝らせましょう」(立石さん 以下同)
もし、また同じような状況で繰り返しそうな気配を察知した際には…。
「子どもの腕をサッと掴んでこんな風に言ってみましょう。“おもちゃを貸してほしいときはどうするんだっけ?”と。このとき、しっかり前に言われたことを思い出させ、自分の言葉で言わせることがとても大事なのです。そして、子どもが自ら気づいて、突き飛ばさず言葉で言えたら“お口で言うことができて偉かったね”と、言葉で言えたことを必ず褒めてやりましょう」
●子どものトラブル。大事なことはまず言い分をしっかり聞くこと
さらに、次のようなケースの場合も対処に気を付けてほしいと、立石さんは話します。
「どんな状況でも悪いことをしたら素直に謝ってほしいと思ってしまいますね。叱ったのに“でも〇〇なんだもん”と言い訳されるとイラッとしてしまいます。でも、もし本当に“自分は悪くない”と思っていたら? そこで子どもの気持ちを理解しないで謝らせるのはどうでしょう?」
よく、兄弟ゲンカでこんな光景はないだろうか?
「弟が泣いています。ママは“きっとお兄ちゃんが何か意地悪したに違いない”と決めつけ、つい現場を見ていないのにお兄ちゃんを叱ってしまったりしませんか? ここで言い分も聞いてもらえず“ごめんなさい”と無理やり言わされたら、上の子はとても悔しく理不尽な思いをします。そうすると、その後、兄弟仲良くするどころか、肩を持ってもらえる弟を憎らしく思い、親の見ていない時間や場所で下の子をいじめるかもしれません」
大事なことは、まず子どもの言い分を聞くことだそう。
「子どもの言い分を聞き、そして“どうしたらよかったかな?”と、一緒に考えましょう。自分のとってしまった行動をしっかり理解させた上で、言葉にして心から謝罪させることが大切です。素直に“ごめんなさい”が言えることはとてもいいことです。しかし、悪くもないのに無理やり謝らせたり、気持ちのない謝罪をさせたりしていると、“ごめんといえば済む”という悪い習慣がついてしまうので気を付けましょう」
しつけとは、その場しのぎの対処では身に付きません。経験したことから何を学ばせるか? そこが何より大事なようです。
(構成・文/横田裕美子)