歯列矯正治療中にむし歯になってしまったら…原因と予防法を歯科医が解説

歯列矯正治療中にむし歯になってしまったら…原因と予防法を歯科医が解説

矯正治療で歯並びがせっかくキレイになっても、むし歯になってしまったら喜びが半減してしまいますよね。そこで今回は、矯正治療中にむし歯になりやすい原因やむし歯になってしまった場合の対処法、効果的なむし歯の予防法について、中野みらい矯正歯科の岡本先生にお聞きしました

監修歯科医師:
岡本 雅文(中野みらい矯正歯科)

日本大学歯学部を卒業後、同大学附属病院にて臨床研修医を経て、臨床研修機関にて矯正治療を専門に学ぶ。その後、歯列矯正専門クリニックでの勤務や、一般歯科の矯正担当医として矯正治療に携わって10年経過。岡 伸二先生と出会い、中野で三代続いた「岡歯科医院」の跡を引き継ぐ。2021年に「中野みらい矯正歯科」を開院。

歯列矯正中はむし歯になりやすい? 大人も子どもも矯正の治療期間中にむし歯になりやすい理由とは?

編集部

歯列矯正中は「むし歯になりやすい」と聞きますが、それはなぜでしょうか?

岡本先生

1つは、歯面に矯正器具が装着されることで、通常よりも歯磨きがしにくくなるからです。また、歯が動き始めると一時的に食べかすが詰まりやすくなったり、歯ブラシの毛先が届きにくくなったりします。

編集部

矯正装置によって「汚れがつきやすい(たまりやすい)」ことが原因なのですね。そのほかに、むし歯になりやすい理由はありますか?

岡本先生

矯正治療中は歯ごたえのある食品が噛みにくくなるほか、硬い食品は控えるよう指導されることもあるため、必然的に軟らかく食べやすい食品を選ぶことが多くなります。ですが、一般的に軟らかい食品は歯や装置の間に食べかすとして詰まりやすく、むし歯リスクが高くなる要因になります。

編集部

むし歯のなりやすさは装置の種類と関係していますか?

岡本先生

矯正治療で広く使用されるマルチブラケット装置は固定式なうえに、ブラケットやワイヤーのすき間に食べかすや細菌がたまりやすい傾向にあります。また、近年人気の高いマウスピース型矯正装置(マウスピース矯正)は歯磨きの際に装置を外せるものの、こちらも油断をするとむし歯リスクが高くなるため注意が必要です。

編集部

取り外しができる「マウスピース型矯正」でも、むし歯リスクが高くなることがあるのですね。

岡本先生

マウスピース型矯正装置は歯の全面を覆ってしまうため唾液の自浄作用が働きにくく、さらに歯が汚れた状態で装着すると細菌が繁殖して、むし歯を発症しやすくなります。とくに、お口が乾燥しやすい方・唾液が少ない方は注意が必要です。したがって、「外せるから」と油断はせずに装着前後はしっかり歯磨きを行い、装置を清潔に保つことが大切です。

歯列矯正の治療中にむし歯になったらどうする? 歯並びとむし歯は同時に治療できる?

編集部

矯正治療中にむし歯になったら、治療はできるのでしょうか?

岡本先生

治療はできます。むし歯の進行状況によってはむしろむし歯の治療を優先的に行う必要があります。

編集部

むし歯治療をするとき、装置(ブラケット・ワイヤー)はどうするのでしょうか?

岡本先生

装置がついている所とは関係ない場所にむし歯が発生した場合は、そのままむし歯治療を行うことがあります。一方で、装置が邪魔でむし歯治療ができない場合は、一旦装置を外してむし歯治療を行い、治療後に再度装置を装着する必要があります。

編集部

マウスピース型矯正の場合、むし歯治療で矯正治療に支障は出ないのでしょうか?

岡本先生

マウスピース型矯正は装置の着脱ができるので、ワイヤー矯正よりも治療はスムーズに行えます。しかし、むし歯治療で歯の形や噛み合わせが変わってしまった場合、すでに作製した装置が使えなくなる可能性があります。その場合は再設計し、新しいマウスピースを作り直す必要があるため注意が必要です。

編集部

そうすると、矯正治療中にむし歯になったら、治療期間がその分長くなってしまうわけですね。

岡本先生

その可能性が高いでしょう。矯正治療はただでさえ治療期間が長くかかってしまうため、それ以上期間を延ばさないためにも、治療中はむし歯予防をこれまで以上に徹底していただきたいと思います。

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