「甲状腺がんの前兆となる初期症状」はご存知ですか?【医師監修】

「甲状腺がんの前兆となる初期症状」はご存知ですか?【医師監修】

のどぼとけのすぐ下にある甲状腺は、10~20g程度の小さな臓器です。この部分ががんに罹患すると、甲状腺がんと診断されます。

一般的に30〜40代に多くみられるといわれていますが、種類によっては高齢者にも発症することがあり、油断は禁物です。

なお、その種類は1つだけではありません。また種類によって予後・生存率などが異なります。

本記事では甲状腺がんの初期症状を中心に解説するので、参考にしてください。

監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)

琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。

甲状腺がんの初期症状

症状としてあげられるのは、主に以下の8つです。

しこり

喉の違和感

声のかすれ(嗄声)

飲み込みにくさ

誤嚥

痛み

血痰

呼吸困難

甲状腺がんの初期症状は多くの場合、自覚症状がありません。症状が進むと次第に病巣部分が肥大化し、しこりとなってあらわれます。しかし、しこりが小さい場合も自覚症状はあまり感じられないかもしれません。
甲状腺全体が腫れ始めてようやく、前脛部分に違和感を覚え始めるでしょう。進行具合によって声のかすれ・飲み込みにくさなどの自覚症状が増え始めます。
特に大きな声を出していないのに何日も声がかすれた状態が続く場合には、病院の診察を受けたほうが良いでしょう。早期発見のポイントについては、後述するのでそちらを参考にしてください。

甲状腺がんの種類

甲状腺がんといっても1種類の病気のことを指しているのではありません。大きく分けると以下の4つに分類されます。

乳頭がん

濾胞(ろほう)がん

髄様(ずいよう)がん

未分化がん

ぞれぞれの種類について解説するので、参考にしてください。

乳頭がん

乳頭がんは日本国内において4つのなかでも約90%と、多くの割合を占めています。特に女性の罹患者が多く、女性10万人に対して年間約8人が罹患しているといわれるがんです。
年齢層は10〜80歳代まで幅広く、「若いから」「高齢だから」という理由で発症しやすいというわけではありません。
ただし予後については、若い人のほうが良好であることが多い傾向にあります。その一方で再発を繰り返すケースもあるため、油断はできません。
罹患するとリンパ節転移を起こす確率が高く、病巣の周囲に及ぶこともあります。しかし一般的に成長は遅いとされており、早期発見すれば寛解率は高まるでしょう。

濾胞(ろほう)がん

濾胞(ろほう)がんは、前述した乳頭がんに次いで罹患率が2番目に高いがんです。日本国内での罹患率は甲状腺がん全体の5%程度といわれています。
男女比でみた場合、1:2〜3と女性に多い傾向にありますが、年代別でみた場合には大差がありません。あらゆる年代で罹患する可能性があるといえるでしょう。
なお良性の場合は濾胞(ろほう)腺腫と呼ばれ、区別が難しいケースもあります。予後は良いとされていますが、転移を伴うと治りにくい傾向があるため油断できません。

髄様(ずいよう)がん

髄様(ずいよう)がんは甲状腺がん全体の1〜2%とされている発症・罹患率が低いがんです。しかしその一方で、乳頭・濾胞(ろほう)に比べて悪性度・転移する確率が高い特徴がみられます。
カルシトニンを分泌する傍濾胞細胞から発症し、罹患すると血中のCEA・カルシトニンの測定値が上昇するのが一般的です。この特徴から、術後の経過観察として腫瘍マーカーを行うこともあるでしょう。
なお遺伝性・突発性の2通りがあり、そのいずれかを確定するためにRET遺伝子を利用して診断することがあります。
ただし遺伝子検査は確定診断だけではなく、血縁者の遺伝情報もわかってしまうため、慎重に行わなければなりません。検査を受けるかどうかについて、遺伝カウンセリングなどの専門家とも相談したほうが良いでしょう。

未分化がん

未分化がんは前述した髄様(ずいよう)がん同様に、甲状腺がん全体の1〜2%程度の発症・罹患率が低いがんです。しかし急速に進行する傾向があり、予後も決して良いとはいえない特徴があります。
年代別では60歳以上に多くみられますが、男女比はほぼ1:1と男性の発症頻度が高いのも特徴です。
進行度の高さから全身へ転移する可能性も高く、1年生存率は5~20%程度とされています。4種類のなかでは治療が難しいといえるでしょう。

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