●脅して言う事を聞かせるのは“親自身のため”
椎名さんによると、脅し文句を使ってしまうのは、親が子どもに対する権威と支配を強く見せる意味で、とても安易な使い方だと言います。
「恐怖心を与えてしまうのは、子どものためではなく、親側の『子どもを支配する』『権威的に見せる』という心理が働いています。その背景には、親自身のコミュニケーションの仕方に問題があることが考えられます。たとえば、論理的な話し方や説明が苦手であるとか、自分の感情的なものがコントロールできないといったものです。そのため、権威や支配によって相手を動かす手段に頼ってしまう。そのため、自分のイライラをすぐ出してしまい、『いつまでも遊んでいるとご飯をあげないわよ』といったように、罰を想像させて言うことを聞かせる方が早いと思ってしまうのです」(椎名さん、以下同)
また、逆に「遊ぶのをやめたら好きなものを買ってあげる」といった、“条件”を提示して言う事を聞かせようとすることも問題があるようです。
「こうした言い方を多用し続けてしまうと、子どもの自由な意思を阻害してしまいます。これは、長い目で見たら子どもの成長に決してプラスにはなりません。また、脅し文句は命令口調や、大きな声を張り上げたり早口だったりします。子どもにちゃんと説明しようという気持ちが欠如していることがほとんどでしょう。これも、子どもが委縮してしまい、親に本心をさらけ出せないと思ってしまうことにつながると思います」
●親自身も恐怖心を煽られて育った可能性も
また、無自覚に脅し文句を使ってしまう親には、ある共通点も見受けられると言います。
「親自身も自分が同じようなことを言われて育ったことが考えられます。その場合、子ども時代を思い返していただくと、コントロールされていたような感じがして嫌悪感を抱くはずです。なので、その経験から学び同じことを繰り返さないと心に決めて欲しいと思います」
子育ては、これといった正解があるものではなく、親も手探り状態。しかし、“人の振り見て我が振り直せ”ということわざもあるように、自身の親が自分にどう接していたかを振り返り、良いところは見習い、悪いところは改めることが大切なのかもしれません。
「母親になったからといって、プロの育児専門家ではありません。ただ、学ぶ意識を持つことで、自分のコンプレックスを払拭していけると思います。親のメッセージが子どもにきちんと伝われば、成長するにしたがって、守らなくてはいけないことを理解していけると思います。しかし、親の感情を押し付けた物の言い方をしてしまっては、子どももそれを察知するので、『うるさいなぁ』とか『今やろうと思ったのに』とか、反発につながり、コミュニケーションが上手く取れなくなる。悪循環に陥ってしまいます」
子どものために、と思って発したひと言でも、よくよく考えてみたら自分がイライラしていたからつい脅し口調になってしまった……なんてことはないでしょうか? 親の言葉の積み重ねは、子どもの行動や成長を大きく変えてしまうもの。慎重な使い方を心掛ける必要がありそうです。
(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)