●脅し文句の多用で子どもが精神の病に陥ることも
“脅す”という言葉は極端かもしれませんが、どんな些細なことでも恐怖心に基づいた行動は、思いもよらない心の病気につながる可能性も否定できないと言います。
「脅し文句を多用したり、支配的な育て方をした場合、子どもが萎縮してしまって自分からは何も言わなくなったり、挑戦する姿勢が失われたりと、マイナスの影響が出ます。また、『○○しないといけない』や『○○しなければ××になる』といった思い込みがひどくなると、強迫神経症という精神の病気に罹ってしまうことにつながってしまいます」(椎名さん、以下同)
強迫神経症は、たとえば手を洗うことがやめられなくなってしまうとか、電気を消したかどうか何度も確認しないと外出できないといった、生活に支障をきたすことにもなりかねない深刻な病気。もちろん全員が強迫神経症になるとは限らないようですが、親の接し方によってはリスクを高めてしまうことになるようです。
「強迫神経症に罹る人の多くは、親に押さえつけられて育ってきたと感じていることが本当に多いんです。なかには、大人になってからもルールがないと不安で自分で極端なルールを作って、自分自身を縛ってしまいます。自分にも厳しいんですが、人にも厳しく、また相手をも支配したくなってしまいます」
●親からの支配を別の相手に転化…いじめに発展することも
しかし、なかには親に何を言われても、まったく気に留めない子どももいます。なぜその差が生まれるのでしょうか?
「どんな小さな子どもでも言う事を聞かないときというのは、何かしらの理由があってのことです。にもかかわらず、親が恐怖心をあたえて、本心を押さえ込もうとすると、忍耐力とは違う我慢を強いられることになります。その積み重ねが大きければ大きいほど、リスクが高まると思います」
また、強迫神経症とは別に、成長過程に暗い影を落とす可能性も無視できないようです。
「親の一方的な考え方を押し付けられ続けると、論理的にしっかりと物事を考えたり、相手の発言が意図することを理解したりできる能力を育む機会を逸してしまうことになります。その場限りで納得したようなフリが上手になり、聞いているようで聞いていない態度を当たり前のように取ってしまう。これは子どもの頃はまだしも、大人になってもコミュニケーションのベースになってしまい、ひいては信頼に欠ける人物という印象を与えてしまうことになります」
さらには、親が見ていないところで悪さをしようとすることにもつながるようです。
「無自覚に恐怖心を与える物言いをしている親は、ちゃんとしつけをしているつもりになっていることがよく見受けられます。そのため、しっかりした意思を持った子に育つかと思いきや、親の見ていないところで悪さをする子も多い。たとえば、誰かをいじめるとか、いじめられたくなかったらお金を持って来いと脅迫するとか、もっと事が大きくなれば暴力を振るってしまいやすい。それは、表現の仕方が違うだけで親が自分を支配しているように、同じことを別の誰かにしているだけなのです」
子どものことを案じて発した言葉が、子どもにとっては支配されていると感じてしまうことも。改めて子どもへの発言を客観的に見直し、脅してしまっていないかどうか確認してみることも大切かもしれません。
(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)