●“本気の遊び”で物事を楽しむ意識が芽生える
しみずさんは、子どもの人生を豊かにするうえで、遊びは大切な要素の一つだと言います。
「子どもたちが遊びを通して、『好きなこと』『打ち込めること』『すごく熱中して楽しくてしょうがないこと』に出会えるのはとても大事だと思っています。それによって子どもの中に、『これをやると自分が夢中になれる』という引き出しができるので、色々なことに対しての感度が高くなります」(しみずさん、以下同)
また、熱中できる遊びを見つけて楽しむ経験をしていると、子どもの中で他のことにも応用しようという意識が働くようになるそう。
「同じ遊びではなくても、『これも面白いかもしれない』『楽しい何かがここに潜んでいるかもしれない』と、物事の楽しみ方を探せるようになります。その意味でも、一つでもいいので熱中できるものに出会っておくのは、子どもの心を“柔らかくする”と思っています」
では、どのような遊びが子どもにプラスの刺激をもたらしてくれるのでしょうか。キッザニア東京の特徴にそのヒントを見つけることができます。
「キッザニア東京の大きな要素として挙げられるのは、『限りなく本物を提供している』ことです。これは、子どもが遊びに“本気”になれるポイントとして重要だと考えています。キッザニアで使用する機材はスポンサー企業さんにご協力いただいて、実際に仕事で使っているものと同じものであったり、同じものを特別に小さく作っていただいたりしています。制服も本物とそっくりのデザインです。子どもが街で見かける“働く大人”とほぼ同じ制服を着て仕事をします。子どもにとっては、「自分は本当に仕事をしている!」という気持ちになるんです」
●本物を取り入れることで遊びを成長につなげる
また、“外側”だけではなく、子どもの“内側”を刺激するポイントもあるようです。
「キッザニアのスタッフは、同じ仕事をする仲間として大人に接するような言葉使いで接しています。たとえば、『さぁみんなー!今からピザを作ろうね』とは言いません。『みなさん、今日はピザショップの仕事をしていただきます』と、たとえ相手が3歳の子どもでも同じ目線で接します」
子どもを“一人の人間”として認めるスタンスによって、子どもにも大きな変化が見られるのだそう。
「一番の変化は、責任感が出ることです。たとえば、以前カメラマンという仕事がありました。このとき、10万円以上する本格的なカメラを提供していただいたのですが、少なくとも私が在籍していた8年間で雑に扱って壊した子どもは一人もいませんでした。本物を体験することで、子どもの持っているものを引きだしている部分があると思います。保護者の方からも『あんなにできると思わなかった』とか、『親が手を出さなければ、一人であんなにできたんですね』って言っていただくこともあります」
こうした“本気の遊び”を、家庭でも簡単に応用することもできるようです。
「キッザニアで子どもの顔が変わるきっかけの1つは、制服に袖を通すときなんですよ。制服を着た途端に顔つきが変わるんです。子ども自身の中でスイッチが入る感じなのかもしれません。ご家庭でもごっこ遊びをする時なども、たとえば普段ママが使っているのと同じエプロンを取り入れてみてはどうでしょう? 全部本物を揃えなくても、1つでも本物のアイテムを加えることで、子どもの気持ちが盛り上がると思います」
子どもにとって、遊びは心と身体の成長でもあり、社会の一員として自覚を持てる大切な手段。ママのちょっとした工夫をエッセンスにすれば、成長にプラスの効果が期待できそうです。
(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)