四十肩・五十肩で病院へ行くべきタイミングはご存じですか? お勧めの対処法も解説

四十肩・五十肩で病院へ行くべきタイミングはご存じですか? お勧めの対処法も解説

肩の痛みは中高年に多く、生活に支障が出て悩んでいる方もたくさんいらっしゃいます。そこで四十肩・五十肩は、いつどのような症状になったら病院にかかるべきかを、整形外科医の羽生亮先生(はにゅう整形外科院長)にMedical DOC編集部が聞きました。

監修医師:
羽生 亮(はにゅう整形外科)

順天堂大学医学部卒業。順天堂大学・大学院医学研究科修了。東京労災病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、順天堂大学医学部附属浦安病院などで経験を積み、越谷市立病院では整形外科医長を勤めたのち、平成26年3月3日、越谷市相模町に「はにゅう整形外科」を開院、院長となる。医学博士、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

四十肩・五十肩とはどんな状態? 原因は?

編集部

「四十肩」について教えてください。

羽生先生

「四十肩・五十肩」とは、肩の痛みや運動制限からなる肩の疾患の総称で、中高年の方によく見られます。正式な病名ではないため明確な定義もないのですが「肩関節周囲炎」という状態になっていることが多いですね。

編集部

どうして四十肩や五十肩になるのですか?

羽生先生

原因については、実はまだ明確には解明されていませんが、肩関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などに炎症が起こり、組織が線維化するためと言われています。 そのほか、運動不足やストレス、不良姿勢、糖尿病、ホルモンバランスの変化、自己免疫疾患なども影響していると考えられています。

編集部

不良姿勢が四十肩や五十肩の原因になるのですか?

羽生先生

その通りです。例えば真っ直ぐな姿勢で手をあげようとすると、ほとんどの方は問題なくバンザイができます。しかし、実際にやってみるとわかると思いますが、背中を大きく丸めた姿勢で手をあげようとすると、おそらく途中までしかあがらないと思います。姿勢は、手足の動きと大きく関連しているので、不良姿勢が原因で四十肩(五十肩)となっている人は、姿勢も含めて治療していく必要があるのです。

編集部

四十肩や五十肩になるとどんな症状が出ますか?

羽生先生

肩の痛みと、肩関節の動かしにくさが代表的な症状です。初期は大きく動かした時のみ痛みが出るのですが、進行すると少し動かしただけで痛みを感じるようになります。運動範囲の制限も、初期は例えば「洗濯物を取り込むなどの手をあげる動作の時に、途中までしか動かせない」など限定的だったのが、徐々に着替えなど通常の生活動作にも支障が出て、最終的にはじっとしていても痛みを感じるようになります。

四十肩・五十肩はどう治す? 治療方法を教えて

編集部

四十肩・五十肩の治療はどのように行うのですか?

羽生先生

まずは安静にしていただくことになりますが、肩関節の炎症が強い時には、薬を処方します。さらに、炎症が落ちついてきたら必要に応じてリハビリテーションやヒアルロン酸注射、ブロック注射、サイレントマニピュレーションなどの治療をすることもあります。

編集部

サイレントマニピュレーションとは何ですか?

羽生先生

肩関節内の炎症が強いなどの理由で、一般的なリハビリテーションができず、症状が長く続いてしまうと、肩関節が徐々に固まってくる場合があります。そのまま進行していくと、肩関節の動きをよくする滑液包や関節を包む関節包が癒着してしまい、「凍結肩」と呼ばれる状態を引き起こします。凍結肩に対しては、以前は全身麻酔での手術(肩関節包切離術)が一般的でしたが、最近新しい治療方法が行われるようになってきました。それがサイレントマニピュレーションです。

編集部

具体的にどんな治療法ですか?

羽生先生

最初に頸部神経根ブロック注射で麻酔を行い、肩関節の痛みが出づらい状態を作ったうえで、医師が少しずつ肩関節を動かして可動域を広げ、本来の肩関節に戻していくという処置を行います。先述のように、肩関節を治療しただけは効果が持続しにくいケースもありますので、リハビリテーションなどを併用して、姿勢などについても改善していくとさらに効果的です。

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