下味はとり天の証
数十年のブランクがあっても「違う」とすぐに気がついたのは、大分のとり天には「下味」がついていたから。
「名古屋でみんなで食べたとり天には、下味がついてなかったから…(苦笑)。ただの鶏肉の天ぷらだったんです。大分のは天ぷらと唐揚げのフュージョンぽかったです」と関さん。
というわけでまずは、下味をつけるための準備からスタート。大きめの生姜一片をすりおろします。おろした生姜はビニール袋に直接入れちゃいます。
スタジオにあるのは棒状のチーズグレーター。関さん、この形状で生姜をおろすのは初体験だったそう。
酒、醤油、ごま油、さらにねぎの青い部分を入れ…
青ねぎは、手で思いっきりちぎればOK。関さんはちぎる派
続いては鶏むね肉をカット。
「天ぷらは、唐揚げと違って皮があんまりカリッとならないから、皮は取り除くようにしています。皮は冷凍庫にためておいて、あとで一気に鶏皮フライにしたりして。」
切り方にちょっと気をつけるだけで、仕上がりがぐんと変わるそう。
「鶏むね肉は、脂が少ないぶんパサっとしがちなので、お肉の繊維を断ち切るように、包丁を斜めに寝かせて薄く切る、つまりそぎ切りにするといいんです。」
カットし終えた鶏むね肉をビニール袋に入れたらもみもみ。
「20〜30分漬けておくと、しっかり下味がつきます。でも、時間がない場合は少なめの漬け時間でも大丈夫!」
海苔を使って、ひとつの料理を2種類に!
下味をつけている間に衣を作ります。卵を溶いて、水を入れたら…
小⻨粉と片栗粉を入れて、しっかり混ぜ合わせます。
さて、ここからは30分後の世界。
下味をつけた鶏肉に衣をつけていくのですが、その前に。鶏肉のうち半分に、海苔をくるっと巻きつけます。
ひとつの料理を二種類にして、食卓を豊かにするための小さな工夫。
衣をつけたら、170度の油で揚げていきます。
「家だとついつい少なめの油で揚げ焼きにしちゃうけど、贅沢にたっぷりの油で揚げるのってやっぱりおいしそうですね。フライパンで揚げ焼きするのでも、もちろん大丈夫です。それぞれみなさんやりやすい方法で作ってください。」
「ぱちっ」「ぱちっ」と元気のいい音がスタジオに響き渡るのが心地いい。揚げ時間は3〜4分くらいが目安。表裏をひっくり返しながら揚げるのが◎。
衣がふわふわっと膨らんだら、きつね色になる前に油からすくいあげて完成!
1枚の鶏むね肉から、こんなにたっぷりのとり天が出来上がりました。
お皿に盛り付けたらさっそく実食。ポン酢とからしを添えていただきます。
わっ、やわらかい!鶏むね肉って、こんなにふわふわさせることもできるのか…!
衣のささやかなカリッとした食感と、頬張った途端にほろほろほぐれていく鶏むね肉。どちらともが優しいせいか、揚げ物らしからぬほどスルスルっと胃の中に吸い込まれていくので、目の前の皿を瞬殺で空にしてしまいやしないかと、どきどきしました。ああ、なんと幸せな動悸。
「すごくやわらかい!」と声を張り上げて感想を述べたところ、「うふふ。やっぱり切り方が大事なんだと思います。あとは、下味をつけるときにごま油を入れているから、それも効いているはず」と関さん。
ツーンとしたからしとの相性が抜群なことにもハッとなりました。
「合いますよね!ゆずこしょうをつけてもおいしいんですよ。」
ポン酢をつけて食べるのもおいしかったです!
今回のとり天の出来栄えを伺ってみたところ、にこにこ顔で「よくできました!」と答えてくれた関さん。
「 Uくん(仮名)に『これが本当のとり天だよね!』って伝えたいですね(笑)。ちなみにUくんは、とり天事件のあと、絵を描くために上京して、高円寺で数年暮らしたあとインドに渡ったと聞いています。でもそこから先はわからない(笑)。
急にアンビリバボーとかに出てきたりしないかな。今どこで何してるんだろう(笑)。」
下味がしっかりついていれば冷めてもおいしいから、お弁当に入れるのもおすすめなとり天。撮影後、スタッフみんなで食べたときにも「やわらかい!」「ふわふわ!」と大評判でした。
鶏むね肉ってこんな食感にもなれるんだ…!というエモーションをぜひ、みなさまのご自宅でも体感してみてほしいです。
配信: アイスム