●最初は小さな嫌がらせから始まった
先のことはわからないが、今回の刑事処分によって、ひとまずは男性も落ち着くだろうと店主は安心している。
そもそもの攻撃の発端は「スタッフを2分おきに呼んで、単価の安いトッピングを頼み、結果として何も食べない」という嫌がらせから始まったという。
再度来店した男性のトッピングの注文を断った日に前出の「爪楊枝事件」が起きた。
男性は「あのとき断られて腹の虫が収まらず、爪楊枝を全部ぶっ込んで帰った」と取り調べで供述したという。
店側には何ら非のないことがわかる。これで目をつけられ、閉店という決断を選ばざるをえなかったとなれば、まったく割に合わないだろう。罰金10万円の有罪判決が見合うのかという疑問もある。
標的にした店を閉店させたという”成功体験”を通じて、別の店に対する犯罪につながらないかという懸念も考えられるところだ。
●店主「ビクビク怯えているよりは、閉店して日常を取り戻すほうが良かった」
実際、男性は他の店にも嫌がらせの電話やSNSで誹謗中傷をおこなっていたという。
「お店の人たちと話し合って、従業員と家族を優先することにしました。
火をつけられるかもしれない。刃物を持ってくるかもしれない。命を奪われたら買い替えられないけど、ものをぶっ壊されたら買い替えられる。お店もまた出せる。だったら閉めちゃうほうがいいね。目先の売り上げより後先を考えたほうが良い。
北海道のコンビニで殺人事件がありましたよね。うちは店舗がもう一つあったからスパッと閉められたという事情は確かにありました。ただ、脅迫に振り回されて本来の仕事ができずビクビクしているよりは、日常の自分たちでいられるほうがいいという結論に至りました。
引き際としては、ちょうどよかったのかなと思います。大きな揉め事にならなくてよかったし、スタッフが刺されて死んだりしなくてよかった。勉強になりました」
警察が動かず事件にならなければ、「ただのカスハラ」として終わっていた出来事かもしれない。それでも、事件化される前に一つの人気店が失われたことをどう捉えれば良いのだろうか。東京都では深刻化するカスハラの問題を受けて、全国初の防止条例を作ろうと検討している。
配信: 弁護士ドットコム