●風邪のウイルスは100種類以上! すべてに効く薬はない
そもそも、風邪の原因となるウイルスを撃退する薬は今のところないそうです。
「風邪の症状は、ウイルスが原因となっている場合がほとんどです。その種類は細かく分けると100種類以上になります。しかし、風邪の原因になるウイルスそのものに直接はたらきかけて退治する薬はありません。そのため、一般的なウイルスによる風邪は本人の免疫力で治すもので、薬は補助する役割になります」(鳥海さん、以下同)
風邪薬として処方されるのは、「咳をやわらげる薬」や「熱を抑える薬」だといいます。抗生剤はウイルスの増殖を防ぐのに効果があると言われますが、ウイルス自体を排除するものではなく、鳥海氏自身は自身の子どもに飲ませる薬も慎重に吟味しているのだとか。
同じく、我が子にあまり薬を使いたくないという親御さんも多いかもしれません。ただ、必要な薬かそうではないかを独断で決めるのは望ましくないといいます。
「いる薬かいらない薬かというのは、症状や状態それぞれなので、一概には言えません。そのため、まずは医師に薬の効能について、しっかりと説明してもらうことが大切です。それを踏まえたうえで、それぞれの薬について最後まで飲み切らないといけないのかどうか、また、薬が苦手なお子さんであれば、優先順位について聞いてみるといいでしょう」
●いつもと違う風邪の症状は要注意!
また、子どもに風邪の症状が出た際、難しいのはただちに医師に連れていくかどうかという判断。その見極めについても聞いてみました。
「風邪がこじれそうな雰囲気を出していれば、早目に医療機関を受診することが大切です。たとえば、いつもの咳と違う『重い咳』をしている場合や、咳込みが強かったり、苦しそうにしていたりする場合。あるいは、発熱時にいつもよりぐったりしている、熱がなかなか下がらないなど、いつものパターンと違う症状の時はやはり、しっかり受診した方が良いでしょう」
症状が重そうなときは、その子自身の免疫力や体力に強い負担がかかっているというサイン。そんなときは、すぐに医療機関に連れて行くべきだと言います。
「そうした症状の際は、『ウイルスや細菌との戦いに不利になっている状況』。特に注意しなければならないのは脱水症状です。子どもは大人よりはるかに脱水になりやすいからです。脱水状態になると、おしっこの回数や量が減ったり、ぐったりしたりなどの様子が表れてきます。場合によっては点滴や入院が必要なこともあるので、躊躇せずに小児科に連れて行きましょう」
風邪のウイルスを退治するのは子どもの免疫力です。薬はあくまでもサポート役ですが、効果がまったくないわけではありません。まずは、どのような効果があるかを医師に聞いてみることが大事なのかもしれません。
(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)