「大腸がん」の初期病変を効率的に見つける方法を発見 藤田医科大学の研究結果

「大腸がん」の初期病変を効率的に見つける方法を発見 藤田医科大学の研究結果

藤田医科大学の研究グループは、画像強調システムである「FICE」を活用した大腸カプセル内視鏡読影が、大腸がんの初期病変を効率的に拾い上げることができるという研究結果を発表しました。この内容について甲斐沼医師に伺いました。

監修医師:
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

藤田医科大学の研究グループが発表した研究内容とは?

藤田医科大学による研究グループが発表した研究内容について教えてください。

甲斐沼先生

今回紹介する研究は、藤田医科大学の研究グループによるもので、成果は学術雑誌「Gastrointestinal Endoscopy」に掲載されています。

FICEは白色光画像から病変部の分光学的情報を抽出し、微細な色の変化を強調する機能です。「小腸カプセル内視鏡におけるFICE観察は、通常の光観察と比較して血管拡張、びらん・潰瘍、腫瘍などの小腸病変の視認性を向上させた」との報告があるものの、大腸カプセル内視鏡におけるFICE観察での大腸腫瘍性病変に対する病変の検出への影響は検討されていませんでした。

研究グループは、2020年4月までに大腸用カプセル内視鏡をおこなってから4カ月以内に大腸内視鏡を実施した91例のうち、多発ポリープ例2例を除く89例を対象に研究を実施しました。患者ごとに検討すると、6mm以上の病変を有する患者の検出感度はCCE-WLで78%、CCE-FICEで93%となり、CCE-FICEの方が有意に高い結果が示されています。また、病変別では、10mm未満の病変や表面型の病変、管状腺腫や鋸歯状腺腫/過形成ポリープといった病変で、CCE-FICEの方が検出感度が有意に高くなることもわかりました。

大腸がんとは?

今回の研究テーマになった大腸がんについて教えてください。

甲斐沼先生

大腸がんは、直腸と結腸からなる大腸に発生するがんで、良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものに分類されます。日本人はS状結腸と直腸にがんができやすいと言われています。大腸の粘膜に発生した大腸がんは大腸の壁に深く侵入し、やがて大腸の壁の外まで広がり腹腔(ふくくう)内に散らばります。さらに、リンパ節転移をしたり、血液の流れに乗って肝臓、肺など別の臓器に遠隔転移したりします。

症状については、早期では自覚症状はほとんどありません。代表的な症状として、血便や下血がみられます。また、進行してくると腸閉塞となり、便は出なくなり腹痛や嘔吐(おうと)などの症状が起こります。⼤腸がんは男性では11⼈に1⼈、⼥性では13⼈に1⼈が⼀⽣のうちに⼀度はかかると言われています。

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