「大腸がん」の「初期症状」とは? 予防のコツを専門医に聞いてみた

「大腸がん」の「初期症状」とは? 予防のコツを専門医に聞いてみた

大腸がんは男女を合わせると日本で最も罹患数が多いがんです。その一方で、大腸がんは定期的な検査をすることで予防したり、重症化を防いだりすることができるがんでもあるとのことです。改めて、大腸がんとは一体どのような病気で、どのように対処していけばよいのか。検査の方法や頻度、予防方法に至るまで、つくば消化器・内視鏡クリニック院長の鈴木英雄先生に解説していただきました。

監修医師:
鈴木 英雄(つくば消化器・内視鏡クリニック)

1994年筑波大学医学専門学群(現・医学群医学類)卒業。専門は消化器内科、医学教育。2003年に株式会社メディシス設立に携わる。2006年テキサス大学M.D. Andersonがんセンター客員助手。2021年筑波大学附属病院つくば予防医学研究センター部長、病院教授。2023年7月につくば消化器・内視鏡クリニックを開院し現職。医学博士。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化管学会胃腸科専門医・指導医、日本消化器がん検診学会認定医・総合認定医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医など。

大腸がんの基本

編集部

大腸がんは簡単にいうと、どのような病気ですか? 発症してしまうと大変な病気なのでしょうか?

鈴木先生

大腸がんは、結腸や直腸にできるがんの一種です。ポリープ(腺腫)が数年の経過で進行して形成されることが多いと言われています。近年増加傾向で部位別がん死亡数では男性の第2位、女性の第1位となっています。大腸がんは進行度合いでステージ0から4までの5段階で表記されます。5年生存率はステージ0が93%、1が92%、2が85%、3aが80%と高率ですが、3bは64%、4は20%と低率になってしまいます。よって、早期の段階で見つけることが非常に大事です。

編集部

大腸がんの初期にはどのような症状が出ますか?

鈴木先生

大腸がんは初期ではほとんど症状が現れません。血便や腹痛、便秘や下痢を繰り返す、体重減少といった症状がある場合は進行している場合があり、無症状の段階でがん検診を受けることが重要です。

編集部

大腸がんになりやすい人やリスク因子にはどのようなものがありますか?

鈴木先生

大腸がんになりやすい人やリスク因子はいくつかあります。以下に、一般的なリスク因子を挙げます。

高齢化

赤身肉・加工肉の摂取

高脂肪・低繊維の食事

肥満

運動不足

喫煙

家族歴

炎症性腸疾患

これらの要因は単独でなく、相互に影響し合うことがあります。ただし、これらのリスク因子が存在していても、予防策や定期的な検診をおこなうことで早期発見・治療が可能となります。大腸がんは予防可能で、健康的な生活習慣や定期的な検診が重要です。食事の質を向上させ、適切な運動をおこない、喫煙や過度のアルコール摂取を避けることが予防につながります。家族歴や年齢などのリスク因子も考慮しながら、定期的な検診を受けることが大切です。

大腸がん検診の大切さについて知る

編集部

大腸がんは、どのような検査で見つかるのですか?

鈴木先生

大腸がんが発見される検査にはいくつかあります。

便潜血検査

便に血液が混ざっているかどうかを検査する方法です。大腸がん検診で2日間便を採取する2日法として用いられています。陽性の場合、確定診断のために大腸内視鏡などほかの検査が必要になります。

大腸内視鏡検査

内視鏡を用いて大腸全体をくまなく観察します。異常が見つかれば同時に生検やポリープ切除もおこなうこともできます。

CTコロノグラフィ

コンピュータ断層撮影(CTスキャン)を使用して、大腸の3次元画像を作成します。5mm程度の小さなポリープも検出できますが、異常が見つかった場合は大腸内視鏡による追加の検査が必要です。

PET-CT

人間ドックやがんの転移、原発巣検索でおこなわれるPET-CTで大腸に集積が認められて大腸がんが発見されることがあります。

血液検査

一般の血液検査の貧血を契機に見つかることもあります。また人間ドックなどでの腫瘍マーカー(例: CEA)で見つかることもあります。

編集部

何も症状が無くても便潜血検査は受けるべきでしょうか?

鈴木先生

大腸がんは初期段階では症状がほとんど現れないため、早期発見のためには、症状が無くても便潜血検査を受けることが重要です。日本では大腸がん検診として40歳以上を対象に年に1回の便潜血検査がおこなわれています。

編集部

大腸がんの検査は、何歳からどのくらいの頻度で受ける必要がありますか?

鈴木先生

大腸がんの家族歴やリスクがない人は、40歳以上を対象にした年に1回の便潜血検査による大腸がん検診を受けることが推奨されています。家族歴やほかのリスク因子がある場合は、年齢とは関係なく便潜血検査や内視鏡検査を受けると良いでしょう。頻度については担当の医師と相談する必要があります。

編集部

特に検査を受けた方が良い人の特徴はありますか?

鈴木先生

家族に大腸がんの人がいる場合やほかのリスク因子がある人は、積極的に便潜血検査や内視鏡検査を受けてください。

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