【闘病】20代で「ベーチェット病」一時は命を絶つことも考える痛み…『自分は幸運だった』

【闘病】20代で「ベーチェット病」一時は命を絶つことも考える痛み…『自分は幸運だった』

原因不明の難病は、だれがいつ発症するか分かりません。今回お話を伺ったいずみさんも、ある日突然起きた腕や陰部の痛み、肌や目の異変から病院を受診したところ「ベーチェット病」と診断されました。そんないずみさんに、ベーチェット病と診断されるまでの経緯や投薬治療、仕事や家庭との両立などについて詳しくお聞きしました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。

体験者プロフィール:
いずみさん(仮称)

夫と2人暮らしの20代女性。2021年3月に腕が上がらないほどの肩痛、陰部潰瘍、左瞼の充血、大量のニキビなどの症状が現れる。最初の産婦人科では「性器ヘルペス」との診断だったが、2件目の産婦人科を受診したところ「ベーチェット病の可能性がある」と言われ、大学病院を紹介された。2021年4月に大学病院の検査で「結節性紅斑」と「不全型ベーチェット病」と診断された。

記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

肩痛から始まり、次々と異変が現れる体

編集部

初めにいずみさんが発症した「ベーチェット病」について教えていただけますか?

いずみさん

ベーチェット病は「口腔内の潰瘍(再発性アフタ性潰瘍)」「外陰部の潰瘍」「皮膚症状」「眼症状」の4つの症状を主症状とする全身性炎症性疾患です。4つの主症状すべてに当てはまると完全型ベーチェット病、主症状が1~2個と副症状で診断されるのが不全型ベーチェット病です。私の場合は主症状のうち口内炎以外の3つに当てはまっていたため、不全型ベーチェット病との診断を受けました。

編集部

ベーチェット病の発症と診断までの経過を教えてください。

いずみさん

私が現在の仕事に転職して半年ほど経過した2021年3月末頃、突然腕が上がらないほどの肩の痛みに襲われました。受診した整形外科で痛み止めのセレコキシブを処方され、しばらく様子を見ていました。しかし、痛みが現れて1週間後に今度は陰部がおかしくなっており、産婦人科を受診しました。産婦人科では「性器ヘルペス」との診断でしたが、それと並行するように左目に重度の充血、顔から胸部にかけて大量のニキビも現れました。

編集部

いろんな症状があらわれたのですね。病院での診断はどうでしたか?

いずみさん

性器ヘルペスの薬をもらって1週間ほど内服しましたが、一向に良くなりませんでした。むしろ陰部潰瘍の痛みはどんどん強くなり、耐えがたい激痛と不正出血も出てくるようになりました。そして、別の産婦人科を受診したところ、「陰部潰瘍からベーチェット病の疑いあり」と診断され、大学病院への紹介状をもらいました。大学病院では皮膚科を受診してニキビ部分を一部切除し、病理検査を行いました。皮膚科からはコルヒチン(抗炎症薬)が処方され、関節炎は少し和らいだものの、排尿痛も襲ってきて我慢の限界でした。

編集部

ベーチェット病の可能性が出てきたのですね。そこからどう診断が進みましたか?

いずみさん

痛みに我慢できず予約日を早めて大学病院を受診したところ、プレドニン20mgが処方されました。今でもはっきり覚えているのですが、プレドニンを内服した日は体の痛みを忘れてぐっすりと眠ることができました。その後、「不全型ベーチェット病」と診断され、私がニキビだと思っていたものは結節性紅斑、左目の充血はぶどう膜炎の眼底出血との説明がありました。

編集部

ベーチェット病は眼症状で視力低下を起こす方が多いですが、いずみさんはどうでしたか?

いずみさん

私は幸いにもリンデロン点眼が良く効いたらしく、視力低下は起こりませんでした。ベーチェット病は診断確定が難しく、疑いの状態で何十年も過ごす方がいるそうなので、私は早期発見できたほうだと思います。

難病・失明・キャリアへの不安で一時は命を絶つことも考えた

編集部

不全型ベーチェット病との確定診断がされ、具体的にはどのような治療の説明がありましたか?

いずみさん

「まずはコルヒチンの内服とリンデロン点眼を行い、炎症が抑えられるか経過観察する」と説明されました。ただ、私は陰部潰瘍による痛みが強かったため、プレドニン治療に切り替えました。プレドニンの量は徐々に減らしていくとの説明も丁寧にしてもらいました。幸い、私はプレドニン20mgを飲み始めた日からぐんぐん回復したため、順調にプレドニンの量を減らすことができました。

編集部

20代という若さで病気が判明した時は大きなショックを受けたかと思います。

いずみさん

聞いたこともない病気だったので、最初は何がなんだかわかりませんでした。「ベーチェット病」で調べると「難病」「治らない病気」「失明する恐れ」と出てきますし、耐えられないほど強い痛みを感じたことからプレドニン内服前は「痛みから逃れるには命を絶つしかない」と本気で思いました。また、仕事を続けられるかどうかもわからず、とにかく怖かったです。当時は転職して半年で、会社でも認められて責任ある立場に任命されたばかりだったこともあり、キャリアが途絶えてしまうかもしれないという不安で一杯でした。

編集部

それほどのショックがあった中で、心の支えになったものは何でしょうか?

いずみさん

家族の存在と仕事が続けられたことです。仕事中は忙しくて病気のことを考えずに済みます。一生付き合っていく必要がある病気なので「医療を受けつつ、どうやって働き続けるか」という課題はありますが、現在の職場は私の病気にも深く理解を示してくれています。出社の調整や出張も強制されず、通院で休みを頻繁に取得することができるので、会社からの理解はとても助かっています。また、私はベーチェット病の診断後に結婚、寛解後には妊娠もしました。死産でしたが、会社の方はいつも体調を気遣ってくださいます。

編集部

もし過去の自分にアドバイスできるなら、どのように声をかけますか?

いずみさん

私の場合、早期にベーチェット病疑いと診断され、大学病院への受診につなげられました。視力低下もせずにすみましたから、過去の自分の行動はベストだったと思います。

関連記事: