「認知症が一気に進む原因」はご存知ですか?進行すると現れる症状も医師が解説!

「認知症が一気に進む原因」はご存知ですか?進行すると現れる症状も医師が解説!

認知症が一気に進む原因とは?Medical DOC監修医が認知症が一気に進む原因・タイプ別の進行速度・進行すると現れる症状・進行を遅らせる方法・対策などを解説します。

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監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)

医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

「認知症」とは?

認知症とは記憶力や判断力、思考能力、情報処理能力などが低下して、日常生活に支障が出ている状態を指す病名です。記憶力の低下が主体となるアルツハイマー型認知症がよく知られていますが、その他にも幻視がみられ、認知機能の変動が目立つレビー小体型認知症や性格が変わり、非常識な行動をとりやすくなる前頭側頭型認知症、脳梗塞を原因で発症する血管性認知症など、様々な種類の認知症があります。認知症はその種類によって認知機能低下の進行速度が異なりますが、生活環境によっても認知症の進み方には大きな個人差があります。認知症の方ではどのようなことに注意する必要があるのかについてご紹介いたします。

認知症が一気に進む原因

アルツハイマー型認知症などの神経変性による認知症では一般に数年~十数年の単位で緩徐に進行します。しかし、精神的なストレスを受けた方や生活環境が変化した方、頭を使う機会を失った方では、より急速に認知機能が低下することがあります。どのような場合に認知症が一気に進みやすいのかをご紹介します。

生活環境の変化

施設へ入所する、病院に入院するなど生活環境に大きな変化があると、急に物忘れがひどくなったり、無気力になったり、怒りっぽくなったりと認知症が一気に進んでしまうことがあります。要因は様々ですが、生活環境の変化により、行動が制限される、以前はできていたことができなくなり自信を喪失する、他人に依存することで行動する機会が減る、新しい環境に順応できず落ち込むなどが要因となると考えられます。

行動する機会の減少・楽しみの喪失

退職や歩行機能の低下による外出機会の減少、友人や家族の喪失などでやりたいこと、やるべきことを喪失すると、認知症が一気に進んでしまうことがあります。新しい刺激がなくなることや自身の役割・楽しみを喪失することで活動意欲がわかなくなること、周囲への気配りや日時などを考える機会が減少することが要因になると考えられます。

考える機会の喪失

人と交流する機会が減少したり、介助者が先回りをしてすべてをこなしてしまったりなど、自分で考える機会を喪失すると、認知症が一気に進んでしまうことがあります。筋肉と同じく、認知機能も普段から使用することで、機能の維持や向上できるものであるため、何かを失敗してしまったとしても意欲的に考える機会を作ることが重要です。

薬剤による影響

認知機能が低下すると怒りっぽくなったり、不安が強くなったり、夜に眠れなくなったりすることがあります。そのような症状に対して抗精神病薬や睡眠導入剤を使用することがありますが、これらの薬剤では副作用で反応が鈍くなったり、認知機能が低下したりすることがあります。また、認知症の治療薬(ドネペジルやメマンチンなど)を使用している場合には薬の中止により、認知症が一気に進んでしまうことがあります。

不眠症/日中の眠気

疲れが溜まっていたり、夜に寝付けなかったりした場合には、日中の強い眠気により、反応が鈍くなったり、認知機能が低下したりすることがあります。ぼーっと過ごしてしまうと、頭を使う機会が減少するため、それにより認知症が一気に進んでしまうことがあります。

h2>認知症のタイプ別・進行速度

認知症はそのタイプごとに認知機能の変化の仕方や進行速度が異なります。ここでは、認知症として代表的なアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症についてご紹介いたします。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は比較的進行の遅い認知症で、数年~十数年かけてゆっくりと進行します。直近の記憶力の低下が目立つ認知症で、進行すると予定を忘れる、貴重品をよくなくすなどの症状が出現します。情報の処理能力は比較的保たれるため、礼節が保たれ、会話中の失言などに対しての取り繕いなどがみられます。症状の自覚が不十分なことが多く、自分の行動自体を完全に忘れてしまうため、貴重品をなくした時など問題があった時に周囲の人を攻めてしまうことがあります(ものとられ妄想)。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症よりは進行の早い認知症で、診断から約5年で重度の認知症となります。また特徴としては認知症が比較的軽い間から認知機能の変動があり、突然これまでできていたことができなくなる、ぼーっとする、おかしな行動をとなるなどの認知機能の低下が数分~数日間続くことがあります。また、実際にはないもの(多くの場合には子供などの人物)が見えることも特徴で、認知機能がある程度保たれている間は本人がそれは幻覚であると自覚している場合もあります。進行するとパーキンソン病のような動きにくさが出たり、日中に過度の眠気がでたり、突然気を失ったりします。

血管性認知症

血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を原因として発症する認知症です。脳血管障害を繰り返すことで階段状に症状が進行するため、動脈硬化の程度や十分な治療を受けているかどうかで症状の進行速度はことなります。症状は脳の障害を受けた場所ごとで違いがあり、情報処理能力が大きく低下する、料理などの順序だてて行う動作が難しくなる、計算ができなくなるなど、日常生活に支障の大きい症状が出ることも少なくありません。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は欲望に忠実な行動や常識はずれな行動をしてしまうタイプとうまく言葉が離せなくなるタイプに分かれますが、おかしな行動をしてしまうタイプでは数年、うまく言葉が離せなくなるタイプでは8~10年ほどで重度の認知症となります。症状が進行すると、おかしな行動をするタイプでは、意味もなく同じ動作を繰り返す、欲しいと思ったものを盗ってしまう、尿意を感じたら公共の場でも放尿するなど常識はずれな行為、時に犯罪となる行為も行ってしまいます。うまく話せなくなるタイプでは、思ったことを伝えることができなくなり、コミュニケーションが取れなくなります。

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