毎日便が出るからと言って「全部出ている」わけじゃない? 勘違いしがちな「便秘」の定義

毎日便が出るからと言って「全部出ている」わけじゃない? 勘違いしがちな「便秘」の定義

慢性的に悩まされている人も多い「便秘」。しかし、便秘にまつわる情報には誤解が多かった? 便秘は「おなか(腸)」の問題と思われがちですが、その多くが「出口(直腸・肛門)」で起きていた…。『便秘の8割はおしりで事件が起きている!』は、大阪肛門科診療所副院長の佐々木みのりさんが、便秘の原因と対策をわかりやすい図解とともにやさしく解説してくれます。正しい知識を得て、スッキリ健康な生活を送りましょう!
※本記事は佐々木みのり著の書籍『便秘の8割はおしりで事件が起きている!』(日東書院本社)から一部抜粋・編集しました。

毎日出る≠全部出ている

毎日排便があっても便秘
便秘は「便が出ない」ことではありません。たとえ毎日排便があり、排便後にスッキリした感覚があっても、出口に便が残っていれば、「便秘」です。そして、毎日のように排便がある人にも、実は「出口の便秘」の人が多いのです。
つまり、排便は「毎日出ている」とか「スッキリ感がある」かどうかが問題なのではないのです。大切なのは、「1回の排便で全部出し切って直腸も肛門も空っぽになっているかどうか」ということ。たとえ2日か3日に1回の排便でも、スッキリと全部出しきっておしりが空っぽになっているなら、出口の便秘ではありません。
便が出ないのも出るのも便秘
出口に便がある状態が当たり前になると、直腸や肛門がだんだん便に対して鈍感になります。こうした状態が慢性化すると、便が下りてきても便意を感じなくなる「鈍感便秘」になっていきます。鈍感便秘はその名のとおり自覚症状がない便秘です。自分では気づかないまま何日分もの便をためていたりします。
また、やっかいなのは、出残っている便が大量の場合、逆に何度も便意を感じる人もいるということ。1日に2度も3度も排便をするので「便秘」とは思っておらず、痔などの病気に進行してはじめて異状に気づく、というパターンが多いのです。
「出口の便秘」が「鈍感便秘」を招く
「出口の便秘」が慢性化すると直腸や肛門が便や便意に対して鈍感になり、「鈍感便秘」となる。
(1)下行結腸に便が下りてくるが、直腸には排泄し切れなかった便が残っている(出残り便)。

(2)放置していると、直腸の便は水分が吸収されて硬くなり、さらにコロコロ便化する。

(3)新しい便が直腸に下りてきて排便すると、前半は硬く、後半は軟らかい(当日の便)状態になる。

(4)また、便を直腸に残したまま排便終了。だんだんと便に対して鈍感になり、便意を感じなくなる(鈍感便秘)。

コロコロ便が出る! はほぼ便秘
コロコロ便は便秘の始まり
ウサギの糞のようにコロコロと丸い形の便を「コロコロ便」といいます。
腸でそれができる場合、原因は、水分不足や偏った食生活、ストレスや疲労による自律神経の乱れなどさまざまです。ですが、直腸や肛門でできる場合は、排出されずに残った「出残り便」がコロコロ化したものです。
出残り便は、最初は軟らかいのですが、直腸壁から水分がどんどん吸収されるので石のようにカチカチになっていきます。これが残便感となり、便意があってもなかなか出ない、無理にいきむと出血するなど、トラブルの原因となるのです。
出残り便がつくり出す便の2階建て構造
直腸は粘膜なので痛みを感じませんが、肛門には知覚神経が通っています。そのため、通常は空っぽのはずの肛門に便が残ると、残便感を感じてスッキリしません。
しかし、本来は通路である直腸や肛門に出残り便のある状態が続くと感覚がマヒし、便をためられるようになっていきます。すると、前日の硬い便の上に新しく下りてきた軟らかい便が積み重なる「2階建て構造」となります。
毎日排便があってもコロコロ便しか出ない場合は、こうした「2階建て構造による出口の便秘」状態になっていることを疑いましょう。
「2階建て構造となった出口の便秘」の図

排出されなかった出残り便は、時間が経つほど水分が直腸壁からどんどん吸収されて、カチカチのコロコロ便化していく。

理想はスルリと出る便
少し硬めの歯みがき粉状
コロコロ便の話が出たところで、健康的な便はどんな状態なのかを解説します。
便は、約70%が水分でできていて、水分がおよそ90%以上になると軟便に、60%以下になるとコロコロ便になります。便の形状は硬いコロコロ便から固形物を含まない水様便までさまざまですが、理想はいきまなくてもスルリと出て、表面がなめらかで歯みがき粉より少し硬めの便です。
便の量は食べた内容によって変わりますが、一般的には1日100〜200g 程度、バナナ1本分程度の排便量が平均といわれます。
便のニオイの原因は悪玉菌によるニオイ物質
健康な便は黄土色〜茶色をしていますが、脂肪の多い食事をしたり、腸での滞留時間が長いほど色は濃くなります。また、おしりで出血している場合は鮮血のような赤、胃や十二指腸から出血している場合は、真っ黒で粘り気のある「タール便」となるので、続くようなら受診しましょう。
便のニオイは、悪玉菌がたんぱく質を分解するときにつくられるインドールやスカトールというニオイ物質です。そのため、腸内環境がよく善玉菌が多いと便臭は強くありません。ですが、腸内環境が悪かったり、たんぱく質の多い食事をするとニオイがキツくなります。
便は何でできている?

便の約7割は水分でできていて、残りの固形分には食べもののカスやはがれた腸壁の粘膜、腸内細菌など。排便時はまわりのガスも一緒に排出される。
理想の便とは

歯みがき粉より少し硬い
なめらかで錬り歯みがき粉より少し硬い程度。いきまずにスルリと出る硬さ。

しっかり形がある
太さは自分の足の親指程度。健康であれば、色や量は食事による。

便器の水が濁らない
最初は水に浮いてだんだんと沈んでいくのがベスト。便器の水は濁らない。

佐々木みのり
1912年創立、110年以上の歴史を持つ大阪肛門科診療所の副院長。肛門科女医の草分け的存在。1994年大阪医科大学を卒業後、大阪大学皮膚科学教室に入局。その後、4年間、大阪大学附属病院、大手前病院、東京女子医大病院などで皮膚科医として勤務した後、1998年に肛門科医に転身。同年7月には日本初となる「女医による肛門科女性外来」を開設。「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。また、元皮膚科医という経歴を持つ異色の肛門科医として、同業の医師を対象に多数の講演を行っている。『痛み かゆみ 便秘に悩んだら オシリを洗うのはやめなさい』(2020年あさ出版)は3万部超えのベストセラーに。「2時ドキッ!」「おはよう朝日です」「痛快!明石家電視台」「世界一受けたい授業」などのテレビほか、多数のメディア出演あり。

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