藤原道長も患っていた「糖尿病」。今に残るその病状からもわかる、糖尿病の怖さ

藤原道長も患っていた「糖尿病」。今に残るその病状からもわかる、糖尿病の怖さ

心臓は私たちの身体に欠かせない臓器で、止まることなく働き続ける「命の泉」のような存在です。『100歳まで元気でいたければ心臓力を鍛えなさい』の著者で、心臓をテーマにした多くの著書を持つ循環器科医・大島一太さんによれば、長生きするには心臓の健康が不可欠であり、日々の生活を意識することが重要だそう。本稿では基本として覚えておきたいトピックを紹介します。
※本記事は大島一太著の書籍『100歳まで元気でいたければ心臓力を鍛えなさい』(かんき出版)から一部抜粋・編集しました。

糖尿病は全身の血管をボロボロにする

心臓力を絶望的に低下させるサイレントキラー、それが糖尿病です。その名のとおり、血液中の糖分が高くなる病気で、症状は何もありません。
それではみなさん、下の切手をご覧ください。これは、1994年、神戸で開催された第15回国際糖尿病会議の記念切手です。

描かれているのは、記録上、糖尿病を患った日本で最も古い人物、藤原道長(966~1-28)。平安時代に摂政、太政大臣をつとめ、時の権力を手中にした公卿です。また、一緒に描かれている六角形は、血糖値を下げるインスリンというホルモンの結晶を表しています。
この頃に残された日記『御堂関白記』や『小右記』には、道長の病状について詳しく綴られています。
そこには、「のどが渇いて水を大量に飲んだ」とか「カラダが痩せてきた」「体力がなくなった」、または「背中に腫れ物ができた」「目が見えなくなった」などと書かれており、まさに糖尿病やその合併症があったことがよくわかります。
また、「胸痛に見舞われた」というようなこともくり返し綴られており、おそらく狭心症もあったと推測されます。
一般に糖尿病は、多飲、多尿、多食、それに体重減少といった症状があらわれ、わかりやすく頭文字をとって「3多1少」といわれます。
では、血糖値が高いだけで、いったい糖尿病のどこが怖いのでしょうか。それは、細いのから太いのまで、すべての血管が障害されるところにあります。
たとえば、細い血管でいえば、網膜症になって目が見えなくなったり、糖尿病性腎症といって、腎臓の機能が悪くなって人工透析になってしまいます。
大血管については、脳の血管が詰まって脳梗塞、心臓の血管がふさがって狭心症や心筋梗塞、両足の血流がとどこおって足が壊死するなど、恐ろしい合併症を発症します。それから、神経障害。物を触って感じる感覚神経、手足を動かす運動神経、そして自律神経など、あらゆる神経に障害が発生します。
糖尿病は、「血管神経病」なのです。

大島一太

医師・医学博士。大島医院院長、東京医科大学循環器内科学分野、東京医科大学八王子医療センター循環器内科兼任講師、日本看護協会看護研修学校非常勤講師、日本循環器学会心不全療養指導士実務部委員、日本心臓病学会特別正会員・フェロー・心臓病上級臨床医、Japan Cardiology Clinic Network理事など。平成8年東京医科大学卒業、同大学院修了。聖路加国際病院循環器内科、東京医科大学八王子医療センター循環器内科、東京医科大学病院循環器内科に勤務。日本循環器学会や日本心臓病学会、日本不整脈心電学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会など、多くの学術集会で教育講演を行い、シンポジスト、座長、査読委員などを歴任。医学系専門誌への執筆は100編以上、その他、健康誌、スポーツ誌など多数執筆。

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