冬は眠くなりやすい? しっかり寝ているはずなのに眠いなら、質の良い睡眠を手に入れよう

「他の季節に比べて、冬はなんだか眠くなる」なんて、思ったことはありませんか? 「眠い季節=春」と思われがちですが、冬に眠気を感じる人も。これにはどんな理由があるのでしょうか?睡眠の専門家でもある医師の坪田 聡さんに、冬になると眠くなる原因と対策を教えてもらいました。

眠っているのに寝足りない! 冬ならではの理由って?

人々の睡眠の質を改善するために、日々、尽力している坪田さん。「冬になると眠い」というお悩みも、多くはないものの耳にすることがあるそうです。果たしてその原因とは……?

日照時間が短いため

「脳内の神経物質であるセロトニンには、目を覚ます働きがあります。この物質は日光を浴びることでつくられるため、日照時間が短い冬はセロトニンの量が減り、眠気が強くなりやすいんです。また、セロトニンは“睡眠ホルモン”と呼ばれるメラトニンの元でもあります。メラトニンには催眠作用があるため、不足して寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなったりすると、日中に眠気を感じやすくなりますね」

自律神経のバランスが崩れやすいため

「季節の変わり目や厳しい寒さは、自律神経のバランスを崩す要因。自律神経には“昼の神経”と言われ、心身を活動的にする交感神経と、“夜の神経”と言われ、心身をリラックスさせる副交感神経があります。これらのバランスが崩れることで機能が低下し、夜、眠りにくくなることも。結果、睡眠不足となって、日中に眠気が現れる人もいます」

体の冷えやアルコールの摂取増加も、眠気を強める要因

「冷え症の方だと、体が冷えて寝つきが悪いことも、冬の睡眠不足につながります。また、冬は忘年会や新年会など、お酒を飲む機会が増えがち。アルコールは寝つきを良くする反面、睡眠の質自体を低下させやすいため、睡眠不足につながって日中、眠気を強める原因になる可能性も考えられますね」

睡眠の質を向上させることは、季節を問わず大切

「基本的に人間は、日中に起きていて夜は眠るものなので、日中に眠い=睡眠の質が悪いということ。睡眠の質を良くするには、“生活習慣を整える”“寝室の環境を良くする”“ストレス解消”という3つのポイントがあります。中でも自身で改善しやすいのは、生活習慣や寝室の環境を整えることなので、まずはこれらを実践していくのが大事ですね」

眠気解消のために実践したい! ぐっすり眠ってすっきり目覚める工夫

日中の眠気を抑えるには、良質な睡眠をとることが不可欠。そのためには何ができるか、具体的な方法を坪田さんに聞きました。

眠る前の準備としてできること

「人間は、体の深部にある脳や内臓などの体温が上がるときに、眠気が減って目覚めやすくなります。反対に、この深部体温が下がってくると、眠気が強まって寝付きやすくなるもの。そのため、良い睡眠をとるには、眠る前の温度コントロールも大切と言えるでしょう」

・効果的な入浴方法

「入浴をすると、深部体温はいったん上昇し、その熱は血管を通って体の表面へと運ばれます。そこで放熱して冷えた血液が再び深部に戻ることで、深部体温が下がってきてだんだん眠くなるんですね。つまり、お風呂から上がった直後ではなく、しばらく経って深部体温が下がったころが眠りやすいとうこと。

具体的には、湯船に40℃以下のお湯を張り、10分から20分ほどつかるのがオススメ。これで深部体温が1℃から1.5℃上がりますが、入浴後の30分から1時間ほどで下がってきて眠くなるので、そのころに布団に入ると良いでしょう」

・快適な寝室と眠りやすい服装

「寝室の温度は、あらかじめ15℃から20℃くらいまで上げ、湿度は50%から60%で調整を。また、照明はすべて消して真っ暗な方が眠りやすいですが、暗いのが苦手な場合は小さな常夜灯のみ点けておきましょう。周囲の音は“静かな図書館程度”と言われる40dbほどが良いとされています。

眠るときの服装は、やわらかな素材で皮膚にストレスを与えにくいものを。寝返りがしやすいように、凹凸がなくスラッとした形がいいですね。また、寒いからと言って布団を何枚も使うと、重くなって寝返りしにくくなります。それよりも部屋を暖かくして、保温性のあるナイトウェアで眠るようにしてください。なお、日中の服から眠るための服に着替えるのは、“入眠儀式”や“スリープセレモニー”と言われる行動のひとつ。そうやって眠るための準備をすることが、眠りやすさや、睡眠の質の向上につながります。

ちなみに、人間は眠っているときの体温が低くなっているため、電気毛布を使う場合はずっと一定の温度にせず、しばらくしたらオフにするのがオススメ。ただ、そのままだと朝が寒いので、可能なら起床時間の30分から1時間前くらい前にオンになる設定で使うと良いでしょう」

朝、目覚めるときにできること

「寒いうえに、太陽が昇るのが遅いため、なかなか起きられないこともある冬の朝。目覚めをよくするなら、起きる30分前から部屋をだんだん明るくしていくのが効果的です。今はそういった機能が付いたシーリングライトなどもあるので、利用してみるのがオススメ。目が覚めたら照明を完全に点け、起き上がってカーテンを開けるようにしましょう。

また、眠る前に起床時間を強く意識することで、目覚めやすくする“自己覚醒法”もあります。たとえば6時に起きようと思ったら枕を6回叩く、といったある意味、セレモニーのようなことをして起きる人もいますね。ただし、こだわりすぎると睡眠の質を悪くする場合があるので、意識しすぎないようにしてください」

眠気がおさまらないのは、睡眠に関わる病気の可能性も?

「“日中、眠気が強いんです”と言って、私の元を訪れる人の8割は睡眠不足が原因です。ただ、中には不眠症や睡眠時無呼吸症候群といった病気の可能性も。また、日照時間の短さなどが原因と言われる冬季うつも考えられるので、気になる場合は睡眠外来などで診療を受けてください」

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