乳がんの早期発見のためには、日ごろからのセルフチェックが非常に重要です。今回お話を聞いたいだもさんは、習慣であるセルフチェックの際に違和感があり、すぐに医療機関を受診して「乳がん」が発覚しました。そんないだもさんは、「まだ若い世代の方は『がんになった後の生活』を前もって考えるのは難しいと思うけど、がんになった場合のことを一度でいいから考えてみてほしい」という強いメッセージをお持ちでした。その思いの背景にある、いだもさんの乳がん発症から治療期間中のさまざまな経験についてお聞きしました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年11月取材。
体験者プロフィール:
いだも(仮称)
1986年生まれ、東京都在住。夫、娘との3人家族。海外駐在の一時帰国中の2020年10月に乳がんが発覚し、全摘手術を受ける。その後、抗がん剤治療と放射線治療を受け、現在はホルモン療法と分子標的薬による治療を続けながら、在宅で事務の仕事をしている。
記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
いつものルーティンでセルフケアをしていたら見つけた違和感
編集部
まず初めに、いだもさんの病気が判明した経緯について教えてください。
いだもさん
私は海外で生活をしていたのですが、当時は一時的に日本へ帰国をしていました。普段からお風呂上りに乳がんのセルフチェックをしており、この時もボディクリームを塗りながらチェックをしていました。そこで胸に嫌な違和感があったので最寄りの乳腺外科を受診したところ、「乳がん」が判明しました。セルフチェックのほか、年に一回マンモグラフィとエコー検査で定期検診も受けていた中での発覚でした。
編集部
乳腺外科ではどのような検査を行ったのでしょうか? また、診断がつくまでにどのくらいの時間を要しましたか?
いだもさん
最初にマンモグラフィとエコー検査、細胞診を行ったところ結果がグレーだったため、針生検とMRIを行いました。確定診断が出るまでは、1カ月程度要したと思います。
編集部
自覚症状などはあったのでしょうか?
いだもさん
体調不良、痛みなどはまったくありませんでした。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
いだもさん
初見は「ステージ0」とのことでしたので、まず手術を行ったところ、リンパ節への転移が発覚しました。やれることはすべてやろうということで、化学療法・放射線治療・ホルモン療法を行うと説明がありました。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
いだもさん
頭が真っ白になり、不安な気分になりました。乳がんは女性の9人に1人が生涯において罹患するとは知っていましたが、「なぜ30代の私が?」と大変驚いたのを覚えています。
手術・治療方法…悩みぬいた上での決断の連続
編集部
一時帰国中に乳がんと診断されましたが、その後また海外へ行かれたのでしょうか?
いだもさん
いいえ、一時帰国中コロナ禍になり海外への渡航が難しかったため、海外の自宅に帰る機会はありませんでした。
編集部
手術は具体的にどのようなことを行ったのでしょうか?
いだもさん
「全摘出か部分摘出か、また再建はどうするのかを選択してほしい」と医師から提案がありました。数週間のうちに決めなければならなかったので、とても悩んだことを今も覚えています。最終的に全摘出(再建なし)を選択しました。
編集部
化学療法、放射線治療の内容についても教えてください。
いだもさん
病理結果で抗がん剤および放射線治療を追加したほうがいい、となりましたので、抗がん剤治療(Dose-dense EC療法を4クール、Dose-dense PTX療法を4クールの計8クール)を行い、その後、放射線療法を25回行いました。現在は、ホルモン療法と併用して飲む抗がん剤(分子標的薬)を再発予防の目的で服用しています。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
いだもさん
生活習慣に起因するものではないので、まずは自分を責めないこと、たまたま、私だった……と思うようにしました。あとは化学療法が終わったタイミングで、院内のパーソナルジムでトレーニングを行うようになりました。
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
いだもさん
家族の支えです。乳がんであることが分かってから私が涙をこぼすと、自分の涙より先に私の涙を拭ってくれた娘と明るく支えてくれる夫に、本当に感謝しています。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
いだもさん
「そのままの私でいいよ、でも頑張りすぎないように」と伝えたいです。
配信: Medical DOC