●加害者は不明ではあるが「いじめ認定」された
ユリさんの欠席が12月までに計60日を超えたため、県教委に相談をした。不登校の原因に、いじめはあったのか。いじめがあったとすれば、加害者は誰なのか、調査委員会が立ち上がることになった。
「調査委員会は、学校独自によるものがいいか。第三者によるものがいいかは考えました。ただ、第三者の調査委員会は、立ち上げまで時間がかかると言われました。だとすると、娘が区切りをつけられないので、悪影響になると思い、弁護士と相談して、学校内調査でも精度の高い調査に加えて、生徒へのアンケートの内容や娘への聴き取りもおこなってもらえるよう要望しました」(母親)
この調査は、いじめ防止対策推進法に基づいて、学校内のいじめ防止等対策委員会でおこなったものだ。メンバーは、校長や教頭、生徒指導主任教諭、生徒指導担当教諭、養護教諭、学年主任、担任、副担任、スクールカウンセラー。さらに埼玉弁護士会推薦の弁護士が外部専門員として加わった。
報告書では、加害者は不明ではあるが、いじめ認定された。そのことが「不登校の一因」とされた。ホームページに一時掲載されたが、黒塗り部分が不十分だったため、いったん取り下げられたあと再公表されている。
●冤罪型の不適切指導もあった
冒頭にも書いたように、不登校の一因は「いじめだけ」ではない。教職員からいじめの加害者扱いをされた、いわば、冤罪型の不適切指導もあった。報告書や母親の説明によると、ある日、生徒Bへ嫌がらせの手紙が届いた。
学年の教員で対応した結果、その手紙を書いたのがユリさんではないかという疑いが浮上して、学年主任がユリさん本人に事情を聞いた。ちなみに、この対応について、管理職は把握していないとしている。
報告書では「教員の対応により、ユリさんやその保護者に不安を感じさせたもの」とした。事実上、犯人扱いされたことは、”不適切な指導”を認めたことになる。
「Bさんはトラブルになったことがない友人でした。嫌がらせの手紙の内容の一部は、パソコンのワープロソフトをプリントアウトしたものや、手書きのものがありました。手書きの字が、私と似ているということでした。ただ、手書きのものはノートを破ったものでした。私は、ノートを破くと気になってしまうので、できない性格です。それを書けるのは私じゃない」(ユリさん)
ほかにも、Bさんの私物なくなるという事件もあった。担任は、ユリさんの母親に電話して、そのアリバイを確認した。
「担任から『先週の土曜日、ユリさんは誰かと外出しませんでしたか?』と聞かれました。なんのことだかわかりませんが、その日は1日一緒でした。娘と『何があったんだろうね』と話していました」(母親)
後日、学校側から説明があった。Bさんの教科書がなくなった翌日、生徒Cさんが発見して、学校に報告したという。防犯カメラをチェックすると、人物と特定できるほど顔がはっきりわからない。Bの私物を持っているという映像もない。しかし、複数の教職員が「ユリさんとシルエットが似ている」と判断したというのだ。
「映像を見せてもらいましたが、映っている人物の体型が、娘とは違います。また、映っていたコートと同じものを娘は持っていません。時間帯も娘と一緒だった時間ですし、証言を誘導されたのではないかと思っています。
手紙の筆跡についても、宿題の作文を見比べたといいますが、まったく似ていません。教員たちが報告書を読んでいるのなら、どう受け取ったのかを知りたい。学校が何も変わらなければ、再び同じことが起きるかもしれません」(母親)
ユリさん側は、報告書の公表時に所見を出した。県教委生徒指導課の課長と指導主事、校長と教頭が、いじめ防止対策推進法についての理解が足りなかったことを報告会で認めて、ユリさんに対して謝罪した。しかし、直接関わった教員たちからの謝罪はない。
配信: 弁護士ドットコム