大人になって読むからこそ?「浦島太郎」が想像より深かった!「人間の一番大事な宝」の答えとは

大人になって読むからこそ?「浦島太郎」が想像より深かった!「人間の一番大事な宝」の答えとは

竜宮で三年の月日が流れ、故郷が恋しくなった浦島

竜宮での毎日は楽しく、あっという間に三年の月日が経ちました。三年目の春に、浦島は久しく忘れていた故郷の夢を見ます。今さらのように「お父さんやお母さんは、今頃どうしているだろう」と思い出して、いてもたってもいられなくなってきました。その様子を見て心配した乙姫様が尋ねます。

「浦島さん、ご気分でもお悪いのですか」

「いいえ、じつは家へ帰りたくなったものですから」

「まあ、それは残念でございますこと。でもあなたのお顔を拝見いたしますと、この上引き留めても、無駄のように思われます」

こう悲しそうに言って、乙姫様は奥から綺麗な宝石で飾った箱を持ってきました。

「これは玉手箱といって、中には人間の一番大事な宝が込めてございます。これをお持ち帰りくださいまし。ですが、あなたがもう一度竜宮へ帰って来たいと思うなら、どんなことがあっても、けっしてこの箱を開けてはいけません」と、くれぐれも念をおして玉手箱を渡しました。

浦島は、「ええ、けっして開けません」と言って、玉手箱を小脇に抱えたまま竜宮の門を出ます。そこには、亀が来て待っていました。浦島が亀の背中に乗ると、亀はすぐ波を切って上がって行って、間もなく元の浜辺に着きました。

「では浦島さん、ご機嫌よろしゅう」と亀は言って、また水の中に潜って行きました。浦島はしばらく亀の行方を見送っていました。

\ココがポイント/

✅竜宮での暮らしは楽しく、あっという間に三年が過ぎた

✅三年目の春に浦島は故郷の夢を見て、帰りたくなる

✅竜宮を去る浦島に乙姫様は玉手箱を渡す

✅乙姫様は、もう一度竜宮に来たいなら絶対に箱を開けてはならないと言った

玉手箱に入っていた「一番大事な宝」とは

浦島が海辺に立ってしばらくあたりを見回していると、どこからともなく、賑やかな舟唄が聴こえました。それは夢の中で見た故郷の景色と同じでしたが、よく見るとそこらの様子がなんとなく変わっていて会う人も見知らない顔ばかり。向こうも妙な顔をしてじろじろ見ながら向こうへ行ってしまいます。

「おかしなこともあるものだ、まあ、早く家へ行ってみよう」

浦島は家の方角へ歩き出しました。ところがそこと思う辺りには草がぼうぼうと茂って、家は影も形もありません。一体お父さんやお母さんはどうなったのでしょうか。浦島は狐につままれたような、きょとんとした顔をしていました。

するとそこへお婆さんがやってきました。浦島は早速、「もしもし、お婆さん、浦島太郎の家はどこでしょう」と声をかけます。お婆さんは怪訝そうに浦島の顔を眺めながら、「へえ、浦島太郎。そんな人は聞いたことがありませんよ」と言いました。

浦島は躍起になって、「そんな筈はありません、確かにこの辺に住んでいたのです」と言いました。そう言われて、お婆さんは、「ああ、そうそう、浦島太郎さんというと、あれはもう三百年も前の人ですよ。何でも私が子供の頃に聞いた話ですがね、ある日舟に乗って釣りに出たまま帰らなかったそうで、多分竜宮へでも行ったのだろうということですよ。なにしろ大昔の話だからね」とこう言って、よぼよぼ歩いて行ってしまいました。

浦島はびっくりしてしまいました。

「竜宮にいたのはたった三年のはずなのに、それが三百年とは。すると竜宮の三年は、人間の三百年にあたるのか。それでは家もなくなるはずだし、お父さんやお母さんがいらっしゃらないのも不思議はない」

こう思うと浦島は急に悲しくなって、竜宮が恋しくてたまらなくなりました。また浜辺へ出てみましたが亀は出て来ず、竜宮へ行く手だてもありませんでした。

その時、浦島は抱えていた玉手箱に気が付きました。「そうだ、この箱を開けて見たら何かわかるかもしれない」

浦島はうっかり乙姫様に言われたことを忘れて、箱の蓋を取りました。すると紫色の雲がむくむく立ち上って、顔にかかったかと思うと箱の中には何も残っていませんでした。その代わりいつの間にか顔中にしわができて手も足も縮こまっています。水に映った影を見ると髪も髭も真っ白なお爺さんになっていました。

浦島は空になった箱の中を覗いて、「なるほど、人間の一番大事な宝というのは寿命だったのだな」と、残念そうに呟きながら、ぼんやりと昔のことを思い出していました。

(おわり)

\ココがポイント/

✅浦島が竜宮から帰るとあたりの様子が何となく変わっていた

✅お婆さんに話を聞くと浦島太郎という人が居たのは三百年前だという

✅竜宮が恋しくなって浜辺に行くが、亀は出て来なかった

✅「何かわかるかも」と玉手箱を開けると浦島はおじいさんになってしまった

✅玉手箱に入っていた宝物は人間の寿命だったのだと浦島は気付いた

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