【薬剤師に聞く】「薬に含まれている添加物」は身体によくないでしょうか?

【薬剤師に聞く】「薬に含まれている添加物」は身体によくないでしょうか?

添加物と聞くと「体に悪いもの」というイメージを持つ人は多くいらっしゃいます。そんな添加物は私たちが普段病気や不調の時に飲んでいる薬にも含まれています。薬に含まれる添加物は飲んでも問題はないのでしょうか? 薬剤師の髙橋さんに解説していただきました。

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監修薬剤師:
髙橋 彩夏(薬剤師)

東京理科大学薬学部薬学科卒業。大学卒業後、大学病院薬剤部に就職。調剤薬局に転職し、婦人科や精神科・心療内科、糖尿病内科、腎臓内科の門前で勤務。「関わる人の生活の質を上げる」をモットーに、現在は医療系メディアを中心にライターとして活動中。

薬に含まれる添加物は飲んでも問題ない?

編集部

そもそも、なぜ薬に添加物が含まれているのですか?

髙橋さん

薬の添加物は、薬の安定性を高めたり、薬を飲みやすくしたりするために含まれています。また、製剤化する上でも添加物は必要であり、有効成分とともに薬を構成する重要な成分です。食品にも腐らず長持ちさせるための安定剤や防腐剤が含まれていますが、医薬品の添加物も同じ役割と考えてください。また、有効成分だけでは薬の形にならなかったり、匂いや苦みがきつく飲みにくかったりするのですが、添加物を加えると、薬として形成できて飲みやすくなります。

編集部

具体的に添加物がどんな目的で薬に含まれていますか?

髙橋さん

大きくわけて、薬を形成する・薬を飲みやすくする・薬の品質を保つといった役割があります。
たとえば、薬には次のものが使われています。

賦形剤(ふけいざい)・可溶化剤:薬のかさを増やして飲みやすくしたり、薬の形状を保ったりする

着色剤・香料・矯味剤:苦みが強い成分や水に溶けにくい有効成分を、薬にしやすいように加える

乳化剤・懸濁化剤(けんだくかざい):水に溶けやすくする

安定剤・緩衝剤・防腐剤:薬の品質を保ち、長期間使えるようにする

編集部

薬に含まれる添加物は飲んでも問題ありませんか?

髙橋さん

はい、問題ありません。なぜなら、添加物は「薬としての効果はなく、有効成分の治療効果を妨げない、人体に無害なこと」が条件付けられているからです。安定性や安全性に関する試験データなどを厚生労働省に提出して承認を受けた物質のみが、添加物として使用されています。しかし、薬を飲む人の体質によってはアレルギーの原因になることもあるので、注意が必要です。

薬に含まれる添加物で注意すべきものは?

編集部

薬に含まれる添加物で注意すべき物質はありますか?

髙橋さん

例えばカゼインナトリウム、ゼラチン、乳糖、エタノールには注意が必要です。カゼインナトリウムが含まれている医薬品は牛乳アレルギーがある人、ゼラチンが添加されている医薬品はゼラチンアレルギーがある人は避けてください。また、さまざまな医薬品に添加されている乳糖の中には牛乳由来のタンパク質が含まれているため、牛乳アレルギーを発症する可能性が否定できません。そしてアルコールに弱い人は、液体の薬に安定剤や可溶化剤の目的で含まれるエタノールに注意しましょう。

編集部

これらはどんな薬に含まれていますか?

髙橋さん

乳糖は多くのものに含まれますが、特に注意すべきは抗インフルエンザ薬ですね。「イナビル」と「リレンザ」は牛乳由来のタンパク質が含まれている乳糖が使われています。牛乳アレルギーの人がインフルエンザにかかったときは、医師に相談してほかの抗インフルエンザ薬を処方してもらってください。気管支喘息の治療薬の中にはエタノールを使用しているものがあります。カゼインナトリウムはビタミン製剤に含まれているケースがあります。

編集部

ほかの添加物でアレルギーが出ることはありますか?

髙橋さん

上記に挙げた成分以外にも、ほかの添加物でもアレルギー症状が出ることもあります。たとえば、増粘剤として多くの医薬品に含まれるカルメロース(CMC)で、アレルギー反応を示す人がいることがわかっています。薬を飲んで発疹や皮膚・目のかゆみが出たら、すぐに病院に受診しましょう。

編集部

添加物に気を付けるべきなのは飲み薬だけですか?

髙橋さん

いいえ。貼り薬や塗り薬、目薬などの外用剤でも、アレルギーが出る可能性はあります。飲み薬にかかわらず、ほとんどすべての薬に添加物が含まれているため、購入前や使用前に確認してください。

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