「バセドウ病」や「橋本病」などで知られている甲状腺疾患は、男性よりも女性に多く発症することがわかっています。一体なぜ、そのような男女差が生じるのでしょうか。また、疾患を発症しやすい人に、共通の特徴があるのかも気になります。甲状腺疾患に関する疑問を「そのだ内科糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院」の薗田先生に投げかけました。
≫【闘病】どうして私が? 「バセドウ病」の再発と「顕微鏡的多発血管炎」の診断
監修医師:
薗田 憲司(そのだ内科糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院)
日本医科大学卒業。その後、東京都済生会中央病院糖尿病・内分泌内科などで経験を積む。2023年、東京都渋谷区に「そのだ内科糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院」を開院。日本糖尿病学会専門医、日本内科学会認定医。著書は「“血糖値”を制して脂肪を落とす! 最新エビデンスと実体験からわかった最強血糖コントロールダイエット(美人力PLUS)」。
なぜ、甲状腺疾患は女性に多い?
編集部
「甲状腺疾患は女性に多く発症する」と聞きました。本当ですか?
薗田先生
はい、本当です。一般的に、甲状腺疾患は「男性と比べて、女性の発症率は約3倍高い」と言われています。
編集部
甲状腺疾患について詳しく教えてください。
薗田先生
よく知られている甲状腺疾患にバセドウ病と橋本病がありますが、どちらも女性に多く発症すると言われています。橋本病と比べると、バセドウ病は男性にみられることもありますが、それでも男女比を考えると、やはり女性に多く発症します。
編集部
一体なぜ、女性に多く発症するのですか?
薗田先生
残念ながら、今のところ原因は明らかになっていません。しかし、これらの疾患は自己免疫疾患という免疫異常によって起きています。自己免疫疾患は、全体的に男性よりも女性に多く発症することがわかっています。そのため、橋本病やバセドウ病も女性が多いのではないかと考えられています。
編集部
なぜ、自己免疫疾患は女性に多いのですか?
薗田先生
様々な意見がありますが、エストロゲンなど女性ホルモンの影響や、X染色体の影響を受け、女性に多く発症するのではないかと考えられています。特に、女性ホルモンは自己抗体の働きを活発にしたり、「サイトカイン」という免疫反応を促すタンパク質を活性したりする働きがあることから、女性に自己免疫疾患が多いと言われています。
甲状腺疾患を発症しやすい人の特徴は?
編集部
甲状腺疾患を発症しやすい人には、何か特徴があるのですか?
薗田先生
1つは、年齢が挙げられます。一般に、橋本病を発症しやすいのは20歳代半ば~40歳代の女性と言われています。一方、バセドウ病はもう少し若年層の女性に多く発症します。
編集部
若い女性にも多いのですね。
薗田先生
はい。最近だと、妊活をしている女性が不妊治療の一環として、甲状腺ホルモンの数値を測ったときに、甲状腺疾患が発見されるケースも多くなっています。
編集部
甲状腺の疾患は遺伝するのですか?
薗田先生
バセドウ病や橋本病は、遺伝的な因子が深く関与していることが研究で明らかになっており、「親、兄弟、祖父母がバセドウ病の場合には、一般の人と比べて20~40倍バセドウ病を発症しやすい(※)」とされています。ただし、身内に甲状腺疾患の患者がいるからといって、必ず発症するわけではありません。
※日本内分泌学会「バセドウ病は遺伝するのですか」
http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=40
編集部
もう少し詳しく教えてください。
薗田先生
疾患の発症には、遺伝的因子のほかに環境的因子があります。例えば、甲状腺疾患の遺伝的因子を持っている人が、日常生活で強いストレスを抱えたり、感染症にかかったり、妊娠・出産などを経験したりしたとき、それらがきっかけとなって疾患を発症することがあります。
編集部
男性が発症する確率はどれくらいですか?
薗田先生
疾患によって異なり、橋本病の男女比は1:20~30くらいと、圧倒的に女性が多いのですが、バセドウ病の男女比は1:3~5くらいと言われています。そのため、男性でも油断は禁物です。もし気になる症状がみられたら、早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。
配信: Medical DOC