●すべての同性愛者が「同じ」ではない
南氏は「LGBTの弁護士」と一括りにされるたびに、違和感を覚えずにはいられない。全員が同じ考え方だとは限らないためだ。同性婚訴訟についても「必ずしもすべての同性愛者が肯定的に捉えているわけではない」と強調する。
「なぜ法律だけが祝福してくれないのだろう、と思うことはあります。法制度の問題として国会で議論されるべき課題だとも考えています」
「ただ『同性婚を認めないのは憲法違反』『同性婚ができればしあわせになれる』とする主張には疑問があります。社会的承認を得ることと、それに加えられる法律の保護は別もので混同してはならないと思います」
「同性婚がなくても、しあわせに生きている人もいます。同性婚は同性愛者だけの問題ではなく、個人と国家、個人と家族に関する法体系全体の問題であると考えています」
南氏は同性婚訴訟の原告や弁護団には加わっておらず、距離を置いているという。一方で、原告の思いを受け止めた判断を裁判所に望む気持ちもある。
これまで吉田氏とともに同性カップルの弁護士として注目され、数々の事件を手がけてきた南氏。今後について聞くと「正直、すこし疲れました」と吐露する。
「立派な弁護士」や「社会の最前線の弁護士」になりたかったわけではない。パートナーと共に生き、「ボチボチ」しあわせになりたかっただけだ。これからは「自分の得手・不得手を意識し、自分が自分を追い詰めないペースで歩いていきたい」という。
【取材協力弁護士】
南 和行(みなみ・かずゆき)弁護士
1976年生まれ。京都大学農学部・同大学院修士課程修了。建材メーカー勤務を経て、2006年に大阪市立大学法科大学院修了(1期生)。2009年弁護士登録。2013年にパートナーの吉田昌史氏とともになんもり法律事務所を開設。松竹芸能にタレント弁護士として所属し、テレビ番組のコメンテーターなどを務める。著書に『同性婚 私たち弁護士夫夫(ふうふ)です』(2015年、祥伝社)などがある。
事務所名:なんもり法律事務所
事務所URL:http://nanmori-law.jp/
配信: 弁護士ドットコム