●小さく生まれた赤ちゃんは、まずNICUへ
「どれくらいの体重で生まれたかによって違いはありますが、ほとんどの低出生体重児は体の機能がまだできあがっていません。自分で体温調節が難しい場合や、いろいろな処置が必要な場合にはNICU(新生児特定集中治療室)の保育器に入ることもあります」(水野教授 以下同)
温かい保育器の中では、赤ちゃんのペースに合わせて治療と成長を促すケアがされる。
「小さな身体にチューブやモニターを装着している姿は痛々しく映るかもしれませんが、赤ちゃんの状態が安定し、成長するごとに減っていきます。『何もできない』と嘆くご両親も多くいらっしゃいますが、ぜひお母さんにしていただきたいのが“タッチケア”です」
ママが(もちろんパパも)赤ちゃんにたくさん触れることで、赤ちゃんの呼吸状態が目に見えて良くなったり、成長発達が促されたりするなど、良い効果をもたらしてくれるのだそう。赤ちゃんの状態が許すなら、その方法法やタイミングを病院のスタッフに聞いて、積極的にわが子に優しくタッチしていこう。
赤ちゃんの状態が安定し、体重が増えてくると、ほとんどの赤ちゃんはNICUほどの集中治療を必要としないGCU(継続保育室)へと移る。(病院によってはGCUがない場合もある)ここからはもう退院に向けてのケアの始まりだ。
「退院の日を迎えた赤ちゃんとご両親には、『もう標準体重で生まれた赤ちゃんと同じように育てていただいて大丈夫です』と言って私達は送り出します。感染症に注意する、予防接種を受けるなどはありますが、それは正期産のお子さんであっても同様に気をつけることだと思います」
●「修正月齢」ってどういうこと?
ところで「修正月齢」という言葉を聞いたことはあるだろうか? 経産婦でも、意外と知らない人が多いこの言葉、早産で生まれた赤ちゃんには重要な意味を持つ。
「修正月齢とは実際に生まれた日ではなく、出産予定日を基準に考える月齢のこと。例えば、予定日より1カ月早く生まれた赤ちゃんなら、生後2カ月が『修正月齢で生後1カ月』になります。発育や発達、離乳食の進みなどはすべて修正月齢に置き換えて考えるのが基本になります」
退院後の育て方は正期産で生まれた赤ちゃんと何も変わらないが、身体面の発達や成長のペースはややゆっくりかもしれない。もしも「赤ちゃんの成長や発達を促すために、親としてできることはありますか?」と聞かれたら、水野教授は「たくさんハグしてあげてくださいね」といつも答えている。
「お母さんにハグをしてもらうと、赤ちゃんの脳からはオキシトシンというホルモンが分泌されます。赤ちゃんの発達を促すために、ハグは医学的見解からもとても有効なんです。いっぱい抱きしめて『大好きだよ、かわいいね』と声をかけてあげてくださいね」
子どもは少しずつでも確実に、日々成長していく。それは小さく生まれた赤ちゃんも、標準体重で生まれた赤ちゃんも同じこと。肌を触れ合わせて、ぎゅっとハグして、その子が自分なりのペースで成長していけるように、親子で一緒に進んでいこう。
(阿部花恵+ノオト)