【実は危険】『炭水化物抜きダイエット』をおすすめできないのはなぜ? 管理栄養士解説

【実は危険】『炭水化物抜きダイエット』をおすすめできないのはなぜ? 管理栄養士解説

一時期「糖質制限」が大流行し、主食を食べずにおかずだけ食べる炭水化物抜きダイエットを実践する人が増えました。確かに、炭水化物を抜くことで体重が減少すると感じる人もいますが、炭水化物を抜いたダイエット法による体重の減少は一時的であり、健康的な身体作りには適していません。そこで今回は、炭水化物抜きによるダイエットのリスクやおすすめできない理由を管理栄養士の村瀬さんに聞きました。

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監修管理栄養士:
村瀬 由真(管理栄養士)

愛知県内大学の管理栄養学科卒業。大学卒業後、精神科病院、給食委託会社での勤務経験あり。幅広い年齢や疾患を持つ方を対象に、献立作成・栄養指導を行う。ダイエットや生活習慣改善へ向けた、食生活の指導が得意。「具体的で行動に移せる記事」をモットーに、食に関する正しい情報を発信して悩みを解決できるようにフリーランスで記事執筆をする。より健康的な食生活の知識を得るために、スポーツ栄養士の資格を目指し勉強中。

炭水化物を減らすことで体にどんな変化が起こる? 体重が減るのはなぜ?

編集部

基本として炭水化物の働きを教えてください。

村瀬さん

炭水化物は三大栄養素の一つで、糖質と食物繊維で構成されています。糖質1gで4kcalのエネルギーになり、吸収効率が早いため身体を動かすための主なエネルギー源となります。炭水化物が多く含まれている代表的な食べ物は、主食である米やパン、うどんやそばなどの麺類、ジャガイモやさつまいもなどのイモ類です。

編集部

炭水化物を減らすと体にどんな変化が起こりますか?

村瀬さん

必要以上の炭水化物(主に糖質)の摂取は、脂肪を蓄積する原因となります。一方で、炭水化物を減らすことは脂肪の蓄積の抑制だけでなく余分な水分が体の外に排出されます。しかし、炭水化物はエネルギー源であるため、過度に減らすと集中力低下や筋肉の分解、身体への不調を招きます。

編集部

筋肉が分解されるのですか?

村瀬さん

糖質からのエネルギーが生成できない場合、体内に蓄積されている脂肪や筋肉を分解してエネルギーを作り出します。とくに筋肉は、脂肪よりも20%ほど重いので、効率よくエネルギーとして使えるため、分解されてしまいます。

編集部

体内の水分が減るのはなぜですか?

村瀬さん

糖質は水分と結合した形で存在し、体内の水分量を保持しています。炭水化物の摂取を控えることで、体内に余分な水分が保有されず、一時的にむくみが取れたような体になります。炭水化物を抜いた食生活を始めた当初に体重の減少が見られやすいのは実は水分が抜けただけであり、ダイエット成功したと感じる理由にもなります。

炭水化物抜きダイエットがおすすめできない理由

編集部

炭水化物抜きダイエットがおすすめできない理由はなぜですか?

村瀬さん

炭水化物を抜くことで、身体に必要なエネルギーを生成することができなくなるためです。糖質の代わりに、脂質や筋肉が分解されるため、筋肉の低下につながります。また、炭水化物を摂取しないことで食物繊維の摂取量も低下するため、腸内環境が悪化し、便秘の原因になります。

編集部

炭水化物抜きダイエットは便秘の原因になるのですね。

村瀬さん

そうですね。食物繊維=炭水化物のひとつですので、炭水化物を減らすと必然的に食物繊維摂取量が減り、便秘を引き起こします。食物繊維には、水に溶け便通の流れをよくする水溶性食物繊維と水に溶けず便をまとめる不溶性食物繊維があります。これらが不足すると腸で便をまとめられず、腸への刺激が弱まり蠕動運動が起こりにくくなります。そして、水分量の不足で、スムーズに排便を促せず、便が腸内に滞るため便秘になります。

編集部

だから炭水化物抜きダイエットだと太りやすくなるのですね。

村瀬さん

それだけではありません。炭水化物抜きダイエットを長期間継続すると、身体が飢餓状態と判断してしまいます。その結果、ほんの少し炭水化物を食べただけで、体に脂肪として蓄積しようとしてしまいます。なぜなら、血糖値を下げるインスリンは、余分な糖を筋肉に蓄積するグリコーゲンや脂肪に蓄積する中性脂肪の合成を促進しますが、飢餓状態では脂肪の蓄積が亢進します。

編集部

おすすめしないのに糖質制限ダイエットが流行る理由はなぜですか?

村瀬さん

糖質制限ダイエットは、食事全体の量を減らすカロリー制限のダイエットよりも手軽に感じるためではないでしょうか。満足のできる食事の量や、たんぱく質源になる肉類の摂取が可能なため、ストレスなくダイエットできると、女性を中心に人気になりました。しかし、炭水化物抜きダイエットの効果は一時的であり、3カ月程度続けると体重が減らず挫折し、リバウンドに悩むという結果になります。

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