ドラッグストアで購入した医薬品の費用、確定申告によって所得税の控除対象になることはご存知ですか? これは「セルフメディケーション税制」と呼ばれ、活用することで税金の負担を減らせることができます。「制度の名前は聞いたことがあるけれど、使ったことはない」「自分が対象になるかわからない」という人へ向けて、薬剤師の髙橋さんに解説していただきました。
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監修薬剤師:
髙橋 彩夏(薬剤師)
東京理科大学薬学部薬学科卒業。大学卒業後、大学病院薬剤部に就職。調剤薬局に転職し、婦人科や精神科・心療内科、糖尿病内科、腎臓内科の門前で勤務。「関わる人の生活の質を上げる」をモットーに、現在は医療系メディアを中心にライターとして活動中。
セルフメディケーション税制とは? どんな制度か薬剤師が解説
編集部
そもそもセルフメディケーションとは何ですか?
髙橋さん
ドラッグストアや薬局で処方せんなしで購入できるOTC医薬品を活用して、自分自身で病気の予防や体調管理をおこなうことです。OTCとはOver The Counter(オーバー・ザ・カウンター)の略で、薬局やドラッグストアなどで自分で選択し購入できる一般用医薬品と要指導医薬品が「OTC医薬品」と呼ばれています。
編集部
具体的にどんなものが当てはまるのでしょうか?
髙橋さん
たとえば、花粉症の症状が出たときに市販の抗アレルギー薬や目薬で対処することが挙げられます。ほかにも、風邪をひいたときに市販の風邪薬を飲むこともセルフメディケーションになります。
編集部
それでは「セルフメディケーション税制」とは何ですか?
髙橋さん
セルフメディケーション税制とは、OTC医薬品の購入費用が1万2000円を超えたときに、確定申告をすれば支払う所得税を減らせる制度です。
編集部
市販で買える薬はすべて対象でしょうか?
髙橋さん
いいえ、セルフメディケーション税制の対象になるのは、厚生労働省が認めた医薬品のみです。とはいえ、2022年から風邪薬やアレルギー症状、腰痛、肩こりなどの薬も対象になったため、多くの人が利用しやすくなりました。パッケージに特定のマークがついており、レシートでは★マークが記載されている医薬品がセルフメディケーション税制の対象です。パッケージに特定のマークがなくとも対象になる薬もあるので、ドラッグストアの薬剤師に相談してください。
セルフメディケーション税制はどんな人が対象になる?
編集部
セルフメディケーション税制が対象になるのはどんな人ですか?
髙橋さん
対象になるには、①所得税や住民税を納めていること、②確定申告の申告期間に健康のために一定の取り組みをおこなっていること、③医療費控除を受けていないことの3つを満たす必要があります。
編集部
「確定申告の申告期間に健康のために一定の取り組みをおこなっていること」について詳しく教えてください。
髙橋さん
具体的には、インフルエンザなどの予防接種、市町村のがん検診、会社の定期健康診断、特定健康診査(メタボ健診)、人間ドックなどの健康診査を受けた人が、セルフメディケーション税制の対象です。健康に関する取り組みの実施を証明できるように、領収書や結果通知表を保管しておきましょう。
編集部
セルフメディケーション税制は、医療費控除とは併用できないのですね。
髙橋さん
はい。医療費控除は、1年間にかかった医療費が10万円を超えたときに所得税を減らせる制度で、セルフメディケーション税制との併用はできません。所得控除額が大きい方をご自身で選択してください。
編集部
セルフメディケーション税制と医療費控除どちらがお得ですか?
髙橋さん
一般的に、医療費が10万円を超える人は医療費控除を受けることをおすすめします。しかし所得によっては、セルフメディケーション税制がお得になるケースもあります。
編集部
それぞれの控除額の計算方法を教えてください。
髙橋さん
医療費控除額は、実際に支払った医療費の合計額から、保険金で補填される金額と10万円(総所得金額が200万円未満の人は総所得金額の5%の金額)を引いた額で、最高200万円まで控除できます。セルフメディケーション税制での控除額は、実際に支払ったOTC医薬品の購入費用から、保険金で補填される金額と1万2000円を引いた額で、最大8万8000円まで控除できます。
配信: Medical DOC