有名人をかたるフェイク広告「減らしていくことはできる」――「たけし『天才だね!』」減少した背景

たけし「天才だね」広告、実は9割以上削減!?


運用型の例。2つ並んで表示されることも

――こうした悪質な広告主に向けた対策は、現状どうなっているのでしょうか?

笠井 芸能人の顔写真や名前を使った悪質な広告は、アフィリエイト広告においては、今から2~3年前の最も多い時と比べて95%以上が削減されました。問題のある事業者を特定し、広告の出稿を禁止するなどの取り組みが進んでいます。

――でも、ネットではいまだにこの手の広告をよく見ます。

笠井 はい。95%以上削減できた、というのは、「アフィリエイト(成果報酬型)」において、なのです。私たちが見ているネット広告には、実は3種類あります。

■予約型

広告を出したい企業が、大手ポータルサイトなどの広告枠を購入し、掲載される広告。純広告やタイアップ広告という。

■運用型

SNS、動画サイト、アプリなどに設置された「ネット広告枠」に、プログラムが自動的に広告を配信する仕組み。そのため、SNS等運営側も自分のサイトに何の広告が掲載されているか把握できていないこともある。クリックや動画視聴の回数によって、報酬が発生する課金型の広告が主流。アドネットワークやレコメンドウィジェット広告等があり、ネットワーク広告会社が広告主を取り仕切る。YouTubeの動画広告、インスタグラムやLINEの広告なども含まれる。

■アフィリエイト

ブログやホームページ上に掲載されたアフィリエイトリンクをクリックした消費者が、広告主のページで購入や申し込みを行うことで報酬が発生する広告。広告主とアフィリエイターをASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)がつないでいる。

――予約型は、広告を受ける媒体側がチェックすることで不正案件ははじけそうです。となると、運用型での不正広告が残っているから、ユーザーには「減ってない」ように見えるのですね。アフィリエイト広告では、不正広告削減のために、どのような取り組みが行われたのですか?

笠井 日本アフィリエイト協議会が呼びかける形で、アフィリエイター、広告主、ASPが三者一丸となって取り組みました。ASP事業者は、常にアフィリエイターのサイトを監視し、違法な表現で商品を宣伝していないかチェックし、アフィリエイターの皆様には、悪質な広告主の商品を紹介しないようご協力いただきました。また、広告主の皆様にも、違法な表現で商品購入を煽るアフィリエイターに対して、自社の商品掲載を許可しないようご協力いただいたんです。

――一方で、いまだ野放し状態の運用型のネット広告の現状については、どう考えていますか?

笠井 アフィリエイト広告で削減できたので、運用型のネット広告においても、減らしていくことはできるでしょう。というのも、悪質な事業者というのは数が限られていて、悪質な通販会社、広告代理店、制作会社は、ネット広告業界内でもう特定されています。例えば、違法広告が100あるとして、仲介してる広告会社は大体5社、その資金源になっている商品の販売会社も5社くらい。その事業者5社を取り次がないよう止めればいいだけなんです。

「医者が『何コレ…!?』と絶句するほど”脂肪肝”だった私」関係者が逮捕

――悪質広告の排除には、各方面からの対策が必要なのですね。

笠井 はい。第一に、消費者の方に問題を知っていただくこと。今回のようにマスコミを通して、知識をつけていただくことはとても大切です。第二に、悪質な通販事業者を潰していくことです。これは今、警察、消費者庁など関係各所がどんどん動いています。そして、3つ目は、いまお話したように、広告を仲介する広告会社や大手サイトが違法なものを取り次がないようにすること。まずは、影響力の大きいFacebookやインスタグラム、Google、YouTubeなどの大手プラットフォームが悪質広告主を突っぱねるようにしていただければ、消費者トラブルも激減させることができるはずです。

――警察、消費者庁の動きで摘発された事例は、どんなケースがありますか?

笠井 最近の事例では、「医者が『何コレ…!?』と絶句するほど”脂肪肝”だった私が、お酒も食事も我慢せずにわずか1か月で正常値まで下げた『最強健康法』とは!?」といった広告を出していた「ステラ漢方」の事例があります。

 7月に、ステラ漢方の広告担当者や担当広告代理店の社長ら計6名が大阪府警に薬機法違反で逮捕されました。ステラ漢方が販売するような「健康食品」が「医薬品」のように効能を説明することは、薬機法で禁じられています。

――関係者が行政処分された事例もあるんですね。

笠井 はい。ほかには、定期購入の契約をめぐり、今年8月に「麹まるごと贅沢青汁」の販売会社wonderに対して、消費者庁より6カ月間の業務停止命令、つまり「ビジネスをしてはいけない」という処分が下されています。消費者を誤認させるようなわかりにくい表記をしてはいけない、と定められている特商法に違反したケースです。

 ほかにも、3月に株式会社ニコリオが販売するダイエットサプリメントにおいて、景表法に違反していると、今後同様の表示を行わないよう埼玉県が措置命令を出しています。景表法は「誇大広告を禁ずる法律」です。

――警察や消費者庁が着々と動いていることがわかりますね。

笠井 はい。さらに行政だけでなく適格消費者団体も対策に動いています。二コリオの措置命令処分においては、埼玉の「埼玉消費者被害をなくす会」による尽力もあったようです。こうした消費者センター、消費者団体など関係各所による消費者を守るための適切な処分も、不正広告の抑止力になり、日々地道な活動が続けられています。

 我々アフィリエイト業界団体としても、消費者トラブルをなくすため『正しくアフィリエイトしよう!』という啓発・啓もう資料の無償公開や、「健康食品や化粧品の定期購入アフィリエイトの取り組み方指針」の公表等を行っておりますので、アフィリエイトやネット広告に関わる方にはぜひご覧いただければと思います。

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SNSの写真、広告に無断で使われた! 誇大・不正・悪質広告でネットユーザーが気をつけるべきこと

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サイゾーウーマン
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料理や収納など暮らしに関する情報や、芸能、海外ゴシップの最新ニュースを連日発信中。ほかにも、皇室や女子刑務所のウラ話、万引きGメンの現場レポなど、個性豊かなコラムも展開。ほかとは異なる切り口で、女性の好奇心を刺激する記事をお届けします。
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