有名人をかたるフェイク広告「減らしていくことはできる」――「たけし『天才だね!』」減少した背景


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 SNS上での「有名人なりすまし広告」が社会的なニュースになっている。著名人になりすまして投資を呼びかけるフェイク広告で、堀江貴文、村上世彰、森永卓郎、中田敦彦、池上彰などの名前や画像を使って詐欺を行っているという。広告のニセ有名人に騙され、投資に応じ、その金を騙し取られたと訴える人が相次いでいることから、社会的な問題として浮上した。

 なりすまし広告はX(旧Twitter)、Facebook、Instagramで表示されているが、それ以前からウェブサイトでは有名人を騙った広告が跋扈していたのは記憶に新しいだろう。2020年にそれら広告の問題点について取材した記事を再掲する。

※2020年9月21日公開の記事を再編集しています。

目次

「たけし『天才だね!』」「マツコ驚愕」広告は法律違反だらけ?

広告では「500円で試せます」などと大きく記載されているが……

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 「たけし『天才だね!』」「マツコ驚愕」――これら言葉を使った広告を各種ウェブサイトで見たことのある人も多いのではないだろうか。

 2018年11月、朝日新聞が「勝手に芸能人名、広告掲載問題視」との見出しで、「たけし『天才だね!』」を筆頭とするネット広告について「実際にはテレビ番組で紹介されておらず、芸能人もまったく関わっていないものがあるとして、成功報酬型のネット広告の業界団体『日本アフィリエイト協議会』(JAO)が問題視」と報じた。しかし、それから2年近くたっても「たけし『天才だね!』」広告はいまだ目につく。

 こうしたウェブ広告にまつわる問題や対策の現状について、消費者庁をはじめとした官公庁と連携して情報交換を行い、アフィリエイト・ビジネスの健全な発展・普及を目指す活動を行う一般社団法人 日本アフィリエイト協議会の代表理事・笠井北斗氏に伺った。

「たけし『天才だね!』」「マツコ驚愕」広告は法律違反だらけ?


「たけしも絶賛」、果たしてどの「たけし」なのか?

――「たけし『天才だね!』」「マツコ驚愕」といった広告の、法律的な問題点について教えてください。

笠井北斗氏(以下、笠井) 多くの法律に触れているといえます。まず「景表法(不当景品類及び不当表示防止法)」ですね。これは簡単に言えば、誇大広告を禁止する法律です。芸能人が使ってもいないのに使ったと、読み手が誤認しかねないように書くことは禁じられています。

――「たけし」「マツコ」とは書いているのですが、「ビートたけし」「マツコ・デラックス」とは書いていませんよね。これも「アウト」なんですか?

笠井 法的にアウトの可能性が高いです。「たけし」「マツコ」と広告で見たら、ほとんどの人はビートたけしさんと、マツコ・デラックスさんを想像するでしょうから、「消費者を誤認させようとしている」といえます。

 実際に「マツコ絶賛広告」が出ていた記事を見てみると、マツコ・デラックスさんではなく、辛口の管理栄養士・松尾和美さんという、一部の友人にあだ名で「マツコ」と呼ばれている、という方が登場する内容だったということもありました。ちなみに、この広告を出していた通販会社はその後、消費者庁に行政処分されています。

 また、「たけし天才」の広告主が販売しているダイエットサプリにも問題があります。サプリメント・健康食品は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、旧薬事法)において、医薬品のように効能、効果を記載することは禁じられています。サプリメントや健康食品なのに「飲むだけで脂肪が溶ける」「アレルギーが治る」と記載するのは、薬機法上、問題のある表現です。

――でも、このような表現は本当によく見かけますね。

笠井 そうなんです。さらに、このようなタレントの名前を使った広告では、芸能人の写真を許可なく使っているケースもありますが、これは「肖像権」上問題があります。ただ、最近は芸能人の写真をそのまま使う広告は、あまり見かけなくなりました。なお、アフィリエイト業界では著作権や肖像権の侵害行為を規約・ガイドラインで禁止しています。

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