【妊娠糖尿病】1度なったら繰り返すの? 出産後の治療は? 育児で気を付けること

【妊娠糖尿病】1度なったら繰り返すの? 出産後の治療は? 育児で気を付けること

妊娠中に血糖値異常や妊娠糖尿病を指摘された人は、次の妊娠時もリスクがあるのでしょうか? また、産後どのように過ごす必要があるのか、育児で気を付ける点はあるのか疑問に思う方も多いはずです。そこで今回は「妊娠糖尿病」のリスクや対処法などを日本糖尿病学会専門医の川名部 新先生(おばな内科クリニック 院長)に解説していただきました。

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監修医師:
川名部 新(おばな内科クリニック)

聖マリアンナ医科大学卒業。同大学病院では代謝内分泌を主として、糖尿病や生活習慣病を専門に経験を重ねる。2023年4月より川崎市中原区にある『おばな内科クリニック』を継承し、院長を務める。日本内科学会認定医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医、臨床研修指導医

妊娠糖尿病って? 糖尿病専門医が解説!

編集部

妊娠糖尿病について教えてください。

川名部先生

妊娠糖尿病とは、妊娠をきっかけに発症した糖の代謝異常のことで、妊娠中に血糖値のコントロールが上手くできなくなってしまう病気です。妊娠前は血糖値に異常がなかった方でも、妊娠後のホルモン分泌の変化により血糖値が上がってしまう場合があります。

編集部

どんな症状が出るのですか?

川名部先生

一般的な糖尿病の初期症状がほとんどないのと同様に、妊娠糖尿病も自覚症状がほとんどないため、妊婦健診で指摘されて初めてわかるという場合が大多数です。

編集部

妊娠糖尿病は治るのですか?

川名部先生

通常の糖尿病とは違い、ほとんどの妊娠糖尿病は出産が終わった後に正常な血糖値に戻ります。なぜならホルモンが出産前の状態に戻るからです。しかし、妊娠糖尿病になると母体はもちろん生まれてくる胎児にも影響が出ることがあります。また、稀に出産後も糖尿病が続く方もいるため、予定通りに妊婦健診を受けて適切な時期に発見・治療することがとても大切です。

妊娠糖尿病が引き起こす問題とは?

編集部

妊娠糖尿病の影響について、もう少し詳しく教えてください。

川名部先生

母体に起こりうる問題としては、妊娠高血圧症候群や羊水過多、巨大児による難産、流産・早産などが言われており、胎児に起こる問題としては、巨大児や新生児低血糖、心臓の肥大、低カルシウム血症・多血症、先天奇形、黄疸、将来の糖尿病発症リスクなどが挙げられています。

編集部

そうならないためにも、やはり早期の発見が大事なのですね。

川名部先生

その通りです。妊娠糖尿病は、血液検査だけで発見できます。ただし糖尿病の血液検査には、随時血糖・空腹時血糖・ブドウ糖負荷検査の3種類がありますので、何回かの血液検査が必要です。

編集部

それぞれの検査について教えてください。

川名部先生

「随時血糖」は通常通りに朝食と昼食を摂った後、血液を採取して血糖を測定する検査で「空腹時血糖」は、文字通り食事(朝食)を摂らない空腹の状態(最終の食事から10時間以上空いた状態)で血液を採取して血糖を測定する検査です。そして「ブドウ糖負荷検査」は糖分が入った検査用のジュースを飲んだ後に採血して血糖を測定する検査です。

編集部

いろいろあるのですね。

川名部先生

そうですね。さらに「ブドウ糖負荷検査」には、食後にブドウ糖が50g入っているジュースを飲んで1時間後に採血して血糖値を測定する「グルコースチャレンジテスト」と、空腹時の血糖値とブドウ糖が75g入っている検査用ジュースを飲んだ1時間後と2時間後の血糖値を調べる「ブドウ糖負荷試験」の2種類があります。通常、「随時血糖」と「空腹時血糖」、そして「グルコースチャレンジテスト」をスクリーニングとして行い、妊娠糖尿病が疑われる場合に「ブドウ糖負荷試験」を行って確定診断するという流れが一般的です。

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