「正しい抱っこ紐の使い方」とは 小児整形外科医が教える子供の発達を守るコツ

「正しい抱っこ紐の使い方」とは 小児整形外科医が教える子供の発達を守るコツ

近年さまざまな商品が出てきており、ますます機能的になってきている「抱っこ紐」。両手がふさがっている場合や、長時間の抱っこの際にとても便利に使える反面、使い方を間違えると事故の原因になったり、子どもの発達に影響を与えたりすることもあります。そこで今回は、「正しい抱っこ紐の使い方」について、運動発達という観点から小児整形外科医の中川先生に解説していただきました。

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監修医師:
中川 将吾(つくば公園前ファミリークリニック)

2009年筑波大学医学専門学群医学類卒業後、小児整形外科を専門とし、筑波大学附属病院、滋賀県立小児保健医療センター整形外科、茨城県立医療大学付属病院整形外科などで勤務し、様々な経験を積む。2022年にはつくば公園前ファミリークリニックを開設し、地域に誇れるクリニックを目指し診療に励んでいる。

抱っこ紐を選ぶ際の基準は?

編集部

抱っこ紐にはさまざまな種類がありますが、どのように使い分けるのがいいのでしょうか?

中川先生

赤ちゃんの月齢によって最適な抱っこ紐は変わってくると考えられます。その理由は運動機能の発達レベルに関係してくるからです。それぞれの抱っこ紐の特徴を捉えて使い分けることで、安全で赤ちゃんにとっても正しい使い方になると思います。

編集部

新生児期の抱っこ紐はどのように選べばいいのですか?

中川先生

新生児期から抱っこ紐を使うことは、運動発達の観点から積極的にはすすめられません。新生児期はまだ体がやわらかく体重も軽いので、優しく手で抱っこしてあげることが理想的です。新生児から使用可能と書かれている抱っこ紐であったとしても、縦抱きで赤ちゃんの首や背骨を固定することは困難であると考えられます。手でのサポートができない場合は、スリングタイプを使用したり、ベビーカーの使用を検討したりしましょう。

編集部

では、縦抱きの抱っこ紐はいつから使用できますか?

中川先生

基本的には首が据わっていれば、一時的な使用については問題ありません。ただし、1人座りができていない赤ちゃんの場合、抱っこ紐の中で背骨をまっすぐに保つことが難しく、くしゃっと折れ曲がって動けなくなってしまっている可能性があります。そのため、抱っこ紐の中に入れたまま長時間の抱っこをおこなう際、背骨の動き方や骨盤の傾きが一方向に固定されてしまう危険性があります。動きの自由度を持たせるという意味では、やはり1人で座って自由に体を動かせるまでは、抱っこ紐を使用していたとしてもお尻や背中を手で支えてあげる方が好ましいと思います。

抱っこ紐の注意点を解説 スリングタイプ・キャリータイプの違いとは

編集部

抱っこ紐は大きく分けてスリングタイプとキャリータイプがあると思いますが、それぞれの注意点を教えてください。

中川先生

わかりました。はじめにスリングタイプの注意点から話していきますね。スリングタイプの抱っこ紐を使用する際は以下の点に注意してください。
① 落下に気をつけること。スリングタイプは赤ちゃんを固定するためのベルトがついていないものがほとんど
② 窒息しないように顔の位置を確認すること。深く入り過ぎると顔の前を覆ってしまう
③ 脚をまっすぐのまま固定しないこと

自由な動きができると股関節の成長に対しての心配はなくなります。

編集部

キャリータイプの場合はどうでしょう?

中川先生

赤ちゃんの側の注意点については上に述べた様に、縦抱きの抱っこ紐の注意点と同じです。どちらかと言うと、このタイプの抱っこ紐は使用する方に対して注意が必要です。ベルトやバンドが緩く赤ちゃんを低く抱きすぎると、重さがベルトを通して腰に集中してしまいます。反り腰の原因になってしまったり、体を痛めたりすることになってしまいます。なるべく体に寄せて、赤ちゃんのおでこにキスができるくらい上げて抱っこするようにしましょう。

編集部

抱っこ紐を使用することで運動発達にどのような影響が考えられますか?

中川先生

抱っこ紐を使用することで、赤ちゃんの動きが制限されてしまったり、動き方に制限を与えてしまっていたりする可能性があります。抱っこしているときの赤ちゃんは音や光に反応して振り返ったり、バランスを崩してしがみついてみたりと、新しい動きを身につけるタイミングでもあります。がんじがらめにしてしまうと、それらの機会を奪ってしまうことになります。抱っこ紐の使用は必要最小限が望ましいでしょう。

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