個人再生の効果:借金を減額する手続きのポイントとは?

個人再生の効果:借金を減額する手続きのポイントとは?

3、個人再生で知っておくべきこと4つ

ここまで、個人再生を選択するメリットについて解説してきましたが、デメリットについても理解しておきましょう。

個人再生を他の債務整理と比較した場合、次のようなことがデメリットとなる可能性があります。

裁判手続きであるため手続きに手間と時間がかかる
すべての借金(債務)を対象に手続きをしなければならない
全額免除はされない
ある程度の収入がないと利用できない

それぞれのデメリットについて、順番に解説いたします。

(1)裁判手続きであるため手続きに手間と時間がかかる

個人再生は、裁判所に申立てをして行う手続きであるという点で任意整理と異なります。

裁判所に個人再生の手続きを認めてもらうためには、必要書類をそろえて申し立て書類を作成しなくてはなりません(弁護士に依頼した場合にはこうした書類作成は代行してもらえます)

あなたの生活費や収入の状況などについても、裁判所に対して詳細に報告する必要がありますし、申立てが受理された後も、裁判官との面談や選任される個人再生委員とのやりとりなどのために裁判所に出向かないといけない場合があります。

必然的に、任意整理などと比較すると手続きに手間と時間がかかることに注意しておきましょう。

個人再生を裁判所に申し立てた場合、最終的に再生計画案が認可されるまでは6か月程度の時間が必要になります。

(2)すべての借金(債務)を対象に手続きをしなければならない

個人再生は、すべての借金(債務)を対象に行わなければならない手続きです。

そのため、「金融機関から借りているお金については借金整理したいけれど、友人知人から借りているお金はこれまで通り返す」といった形をとることができません。

ここが、任意整理より不自由な点と言えるでしょう。

もっとも、精算手続きをしたくない友人からの借金でも、手続き後に任意に全額支払うことは可能です。

(3)全額免除されない

個人再生では、借金残高・保有財産の状況に応じて、その一部について返済を免除してもらえます。

しかし、自己破産の場合のように、全額免除を受けられるわけではありません。

(4)価値のある資産を持っている場合は注意が必要

資産価値の高い財産を持っているときには、借金減額幅が小さくなることがあります。

個人再生では、「仮に自己破産した場合に配当可能な金額」よりも多い金額を債権者に返済しなければならないとされているからです。

これを清算価値保障の原則とよびます。

たとえば、住宅ローンを完済している(ローン残額が評価額よりも少ない)不動産を持っているようなケースでは、清算価値が大きくなり過ぎて個人再生では借金が全く減額されないこともあります。

(5)ある程度の収入がないと利用できない

個人再生手続きでは、最終的に「再生計画」という減額後の借金を返済していく計画書を裁判所に認可してもらわなくてはなりません。

再生計画の認可を受けるためには、あなた自身にある程度安定した収入があることが条件となります。

ただし、自分名義での収入がなくても、専業主婦なので配偶者に十分な収入があるケース、アルバイトやパートの人、年金生活者でも、再生計画の遂行が可能な程度の継続的な収入があれば、個人再生を利用できます。

4、個人再生は自分でできる?自分で手続きする場合の注意点とは

この記事を読んでいらっしゃる方の中には、「個人再生手続きを自力でやろうと考えている」という方も多いかもしれません。 

弁護士などの専門家に個人再生の手続きを依頼すると費用が発生しますから、少しでも負担を小さくするために自力で手続きを行うことは一見合理的であるように思えます。

しかし、結論から言うと、個人再生手続きを法律実務の経験がない方が自力でやるのは難しいのが実情です。

その理由としては、次のようなことがあげられます。

必要書類や申立て書類の準備にはかなりの労力が必要
弁護士に依頼しない場合も、個人再生委員の費用が必要になる
適正な再生計画案を期限までに作成・提出する必要がある

以下、順番に説明いたします。

(1)必要書類や申立て書類の準備にはかなりの労力が必要

個人再生の申立てを裁判所に対して行うためには、以下のような必要書類をそろえて提出しなくてはなりません。

申立書
陳述書
債権者の一覧表
家計の収支報告書
所有財産の目録
最低弁済額を算出する計算書

これらの書類は経験のない方が作成する際には非常に労力がかかります。

不備があると申立てが受理してもらえないことも考えられますので、弁護士に依頼して準備してもらった方がよいでしょう。

(2)弁護士に依頼しない場合も、個人再生委員の費用が必要になる

個人再生手続きを弁護士に依頼せずに行う場合、裁判所は多くのケースで「個人再生委員」を選任します(ただし、弁護士に依頼した場合にも選任されることがあります:東京地方裁判所ではすべての事案について再生委員が選任される扱いとなっています)。

個人再生委員は、あなたが裁判所内での手続きをしていく上で様々な支援をする役割を持った人で、通常は資格を持った弁護士が選任されます。

この個人再生委員が選任される場合には、当然ながら再生委員に対して支払う報酬が発生することに注意が必要です。

弁護士に依頼した場合には再生委員報酬は15万円、弁護士に依頼しない場合には25万円が相場となります。

(3)適正な再生計画案を期限までに作成・提出する必要がある

個人再生の手続きでは、手続き開始後、債権認否表や再生計画案などをそれぞれの決められた提出期限までに作成して提出しなければならず、この期限内に提出できないと手続が廃止されてしまいます。

そして、特に肝心の再生計画案では、債務が減額された後の支払額について、どの債権者にいくら分配するのか、毎月の支払額はいくらになるのか、毎月支払うか3ヶ月に1回の支払いにするかなど、再生計画案が認可された後の支払いについて、法律の要件を満たすように計画案を作成しなければならず、経験のない方がこれらの書類を作成することは難しいといえます。

弁護士に依頼すれば、裁判所での手続きが開始された後についても、しっかり手続をしてくれますから安心です。

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